あなどれない粉瘤の化膿 免疫力が低下する季節の変わり目に注意 切開できる病院がどうかのチェックも 医師が解説
意外なことに、 涼しくなってから粉瘤(ふんりゅう、アテローム)が化膿して来院される患者さんが増えています。
粉瘤とは皮下の袋状のできもので 、毛穴に皮脂や角質が溜まってできるとされています。顔面や首、耳周囲、背中、お尻等に比較的固く触れるできものがあり、その一部に黒い点が確認できれば粉瘤でほぼ間違いないです。 黒い点は粉瘤が発生した毛穴で、そこから臭い白いものが出たり、急に腫れてきて破裂したという訴えで来院されます。
梅雨から夏にかけての細菌が繁殖する時期に化膿することが多いとされていますが、当院の経験では夏は少なく、秋や春などの季節の変わり目に多い印象があります。季節の変わり目は体調を崩すことが多く、免疫力が低下し化膿するのではないかと勝手に推測しています。
化膿しているときは一部を小さく切開して排膿を行い、炎症を収めてから摘出術を行います。切開排膿だけで一旦症状は治りますので経過観察してもいいのですが、粉瘤の袋や内容物は残存しており、背中やお尻など外的刺激がある部位は再化膿することが多いので摘出術をお勧めします。摘出術は局所麻酔の日帰り手術で、15分くらいで終了します。
アメリカ皮膚科学会では、粉瘤が腫れるのは細菌感染ではなく局所のアレルギー反応と考えられていますので、抗生剤投与は行わずに、切開とステロイドの局所注射が推奨されています。個人的には切開は必要で、 アレルギー反応に加えて細菌感染が合併していることも多いので短期の抗生剤投与も必要と考えています。皮膚のできものが腫れてきて粉瘤ではないかと疑われた場合は、切開できるクリニックかどうかを確認してからの受診をお勧めします。
◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。