喘息死ゼロへのカギは吸入ステロイドの継続 無症状の時期の予防が重要 専門医が呼びかけ
先日著名な落語家さんが喘息でお亡くなりになりました。大変残念に感じると同時に、喘息が原因で亡くなることもあるのかと驚いた方もたくさんいらっしゃったと思います。最近では呼吸器科医の私でもそれほど耳にする話ではありません。午前3時頃に亡くなられたとのことで、救急病院での当直中に夜中や朝方に喘息の患者さんがしばしば来院されたことを思い出しました。待ち時間が短いからとわざと夜中に受診する患者さんの話を時々聞きますが、喘息の患者さんはそうではなく、副交感神経優位に傾く夜中や朝方に悪化するのです。
私が医師になった30年前は年間約6000人の方が喘息でお亡くなりになっていました。吸入ステロイド薬の開発を始め様々な治療の進捗により、2021年では喘息死は約1000人まで減少しました。我々呼吸器科医は喘息死ゼロを目指して日々診療しているわけですが、症状がなくなると治療を中断してしまう方が結構多いのです。
喘息治療の基本はステロイドの吸入ですが、無症状の時期にも吸入を継続し症状が出ないように予防することが治療と同じくらい重要です。注意すべきは喘息死される方の4割が重症喘息ですが、4割は軽症もしくは中等症の患者さんであるということです。また喘息死される方の大多数は65歳以上の高齢者ですので、すべての高齢者の喘息患者さんは自己判断で治療をやめないようにすることが肝要です。
ステロイドは副作用があって怖いと言って吸入を中断する方がしばしばおられますが、内服や点滴ステロイドとは違い正しく使用すると副作用は少なく、むしろ吸入を止める方が怖いのです。吸入ステロイドの継続が喘息死ゼロへのカギになります。
◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。