頭痛、肩こり、腰痛をもたらす「気象病」 全世代で女性がなりやすい、低気圧には野菜を
天気が悪くなる前後や梅雨の時期などに現れる、片頭痛、緊張型頭痛、肩こり、腰痛、関節痛などのさまざまな体調不良を我々は「気象病」と呼んでいます。これら心身への不調は、気圧の急激な変化によって自律神経が異常活性することが原因です。気象病は全年代を通じて男性より女性の方がなりやすいと言われており、また10代の子どもや高齢者は自律神経が弱いため、気象病になるリスクが高いとされています。
雨、つまり低気圧の中心付近と、快晴で高気圧の中心にある状態では、気圧の変化を感知する内耳にあるセンサーが、脳神経の一つである前庭神経を過剰に興奮させ、自律神経のバランスを乱します。交感神経が優位になりすぎると、めまいや片頭痛、関節痛の悪化などの症状が、一方、副交感神経が優位になりすぎると、眠気やだるさ、うつ症状が生じます。
片頭痛はまだ不明な部分も多いですが、一般には血管拡張が原因といわれています。低気圧になると、普段よりも身体に気圧がかかっていない状態になるため、血管が膨張します。この膨らんだ血管が、神経に作用して痛みが現れるのです。片頭痛は雨の日に起きやすいと言われますが、こめかみから額にかけてズキズキと疼くように痛みます。ひどくなると一時的な視野の欠損まで起こります。
緊張性頭痛は、頭全体か後頚部に、はちまきで頭が締め付けられているような頭痛が出現します。緊張性頭痛の原因として有力なのが、体内で生成されるセロトニンです。低気圧が近づいて来ると、血小板から放出される神経伝達物質であるセロトニンの分泌量が不安定になります。セロトニンには血管を収縮させる働きがあるため、血管内に大量に出ると脳の血管は縮みますが、セロトニンが出つくしてしまうと、今度は脳の血管が勢いよく膨張します。このとき血管を取り巻いている三叉神経が興奮した状態となり、痛みが発生します。
対策ですが、低気圧の体調不良には、マグネシウムを含む硬水や、ほうれん草など野菜を使った野菜ジュースなどが有効です。マグネシウム血液やリンパ液の循環を正常にし、利尿作用で体内の余計な水分を排出して、むくみを予防します。マグネシウムが豊富な食材は、アーモンド・海藻類・小魚・大豆などです。筋収縮を制御したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓を作りにくくするなどの効果があります。緊張性頭痛のほか、よく足がつる方、冷え性の方は、マグネシウムを多く摂取して血流改善しましょう。
気象病への対処としては、自律神経のバランスを整えることが大切です。早寝早起き、朝食を取る、適度な運動、十分な睡眠、入浴など規則正しい生活を送ることです。前述の内耳のセンサーが敏感な原因は内耳の血行が悪いことがわかっていますので、内耳の血行をよくすることが大切です。またカフェインは血管を収縮させる作用があるため、片頭痛に対して即効性があります。コーヒーが苦手な方には、同様にカフェインを含んでいる緑茶や紅茶でも構いません。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。