がん家系という言葉は適切ではない、現代の日本人はがんか老衰で死ぬしかない

 日本人の死因の3分の1は「がん」です。テレビでも日本人の2人に1人はがんにかかる、などという言葉が出て来ますが、これは何も日本人が特別、がんにかかりやすい民族・人種であるということではありません。

 そもそも、がんはなぜできるのでしょう?専門的に言うと、細胞の遺伝子に傷がついて、その傷の重なった異常な細胞が増殖して大きくなったものですが、その始まりは1個のがん細胞。細胞が分裂する時にたまたまできる「ミスコピー細胞」なのです。健康な人でも体内で毎日、5000個のがん細胞が生まれていますが、人の体を構成する60兆個の細胞のうちの5000個だと考えれば、多くはありません。一国の国家予算に比べて、財布の中の5千円札1枚です。

 これらのがん細胞は産まれた途端に、リンパ球、つまり免疫細胞によって排除されます。リンパ球からすり抜けたがん細胞も全て削除されるよう、幾重にも免疫のセキュリティシステムが張り巡らされています。それでも厳重なセキュリティを潜り抜けて23回分裂すると約3億個、直径5ミリのがんになります。天文学的に低い確率の「偶然」。そうなんです。「がんができるのは偶然」なのです。1個のがん細胞が5ミリに成長するのに20年かかります。ところが5ミリに育ったがんは、もはや免疫で排除できず、わずか2年で1キロの大きさに増大します。

 日本人の平均寿命は実質、男女とも世界一のたいへんな「ご長寿国」です。長生きすればするほど、がんにかかるという偶然に当たる確率も増します。今の日本の医療水準もこれまた世界有数の高レベルで、脳卒中や心筋梗塞になっても、後遺症は残るとしても、命を落とすことはほとんどありません。極端に言えば、現代の日本人は、がんか老衰で死ぬしかないのです。がん家系という言葉も適切ではありません。遺伝的に発生するがんは全体の5%以下です。喫煙や飲酒や肥満など、すべてのその人の生活習慣によって左右されるのです。

 そこで一部のがん研究者は、5ミリの大きさになる前、超々々早期のがんを発見するため、がん遺伝子検査の開発に血道をあげています。今の時点でも十種類以上のがん遺伝子検査が商品化されていますが、私に言わせるとどれも一長一短です。まず自費医療なので値段が高い。精度が高いほど値段も張る。結果の見方が複雑で素人にはわからない。膨大な検査結果のデータを見て、受検者のどの臓器に何年以内に、何%の確率でがんが発生するリスクがあるか、これを判定でき受検者に説明できるスキルを持つ医師などほとんどいない。

 かといって簡単なものはA・B・Cの3段階で、受検者の将来的な発がんリスクを示すだけ。予防医療の最尖兵とも言えるがん遺伝子検査といっても、残念ながらこんなレベルなのです。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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