元虎戦士・葛城育郎さん 地鶏居酒屋オーナーで成功 金本監督も“常連客”に
「ウォォォ~」。かつてお立ち台の絶叫が代名詞になった男は今その雄たけびを看板に、セカンドステージに花を咲かせている。オリックス、阪神OBの葛城育郎さん(40)は11年に現役引退後、兵庫県西宮市内に「酒美鶏(さけびどり)葛城」をオープン。地鶏居酒屋のオーナーとして厨房(ちゅうぼう)に立ち続け、13年夏の開業から5年目を迎える今年も店内は連夜、にぎわいを見せている。
99年度ドラフトでオリックスを逆指名し、03年オフにトレードで阪神へ移籍。思い返せば金本(阪神監督)の連続フルイニング出場の世界記録が途切れた一戦で代役として先発した男。マルチな才かつ高度な打撃技術で記憶に残る選手だった。
酒美…店名の由来は聞くまでもない。甲子園のヒーローインタビューで「勝利の雄たけびを」と注文され、ただ「叫んだ」選手は長いプロ野球史で葛城さんただ一人。仲間、ファンに愛されたキャラが現在の成功につながったのかもしれない。
来客数は多い月で約1000人。年間で約1万人に及ぶ。多くの阪神OBから「別の畑へ移った、数少ない成功者」と言われる。それでも葛城さんは「まだ成功とは思ってませんよ。いろいろ攻めないと、すぐに飽きられる世界ですから…」。
野球界に未練を残しながら、飲食の道へ進んだ理由…それは「もともと鶏(料理)が大好きで、鶏の味ならよく分かったから」。2年近く神戸と大阪で修業を積み、皿洗いから始めた。「元虎戦士」のアドバンテージは確かにあった。でも、それが「つかの間の下駄」である認識、冷静さを失わなかったことで店を軌道に乗せた。
「元阪神の葛城が出した店…というだけで言葉は悪いですけど、味に関しては最初ナメられていたと思うんですよ。でも実際に『おいしかった』という言葉をいただけるようになって、それが自信にもなりましたし…」
アイデアマンの葛城さんは既に次の一手を考えている。「今からちょっとおもしろいものを…。カレーを使った新しい食べ物なんですけど、お楽しみということで…」。常連客の金本監督から「お前の店の隣に地鶏の店を出してやろうか(笑)」などと“妨害”を受けながらも…第2章へ攻撃の手を緩めない。(デイリースポーツ・吉田 風)