元東邦「バンビ」坂本佳一さん 会社員生活と野球に通じる指導の信念とは
今夏の甲子園レジェンド始球式で、その懐かしい姿に心を躍らせた人も多いのではないだろうか。東邦(愛知)の投手として1977年夏に準優勝した坂本佳一さん(57)は現在、名古屋市内にある鉄鋼、機械関係の企業・岡谷鋼機で本店長室に勤務している。
甲子園決勝・東洋大姫路戦でサヨナラ3ランを浴び敗れたが「バンビ」と呼ばれ人気者に。しかしその後の野球人生は平たんではなかった。高2以降は甲子園出場はなく、法大でもレギュラーへの道はかなわず。社会人野球の日本鋼管に進んだが、2年で選手を引退。その後、同社を退社し現職に就いた。
サラリーマンとして組織で働く中で、大切にしているのは「人それぞれ役割があり、それを責任持って全うすること」だ。「僕は高1からレギュラーだったので、補欠メンバーの気持ちを知らないままだった。大学で補欠になって初めて知ったんです。支える立場の人がいないと、野球はできないって」。花を咲かせられなかった大学・社会人野球の経験は、その後人生の糧になっている。
平日は会社の管理部門の仕事に従事し、休日には愛知県尾張旭市内の少年少女野球チーム「ペイフォワード」の練習を手伝う。小学生と一緒に白球を追うのが楽しみだという。
若手社員を指導する時も子供に野球を教える時も、同じ信念を持っている。「モチベーションを持って役割を果たしてもらうには、その仕事の意味を説明して、期待度を伝えること。これは大人にも子供にも大事。単に『これをやれ』と言うのではだめなんです」と言葉を選ぶという。
「ペイフォワード」には練習メニューそれぞれにキャプテンがいる。俊足の選手は走塁練習のキャプテンで、みんなの先頭を切って走る。守備のキャプテンは全体を見渡す。道具のキャプテンは道具をそろえる責任者だ。
「高学年になれば責任を持って練習の中心を担うし、いい効果がある。子供にも、任命した意味や期待度を説明します。大人になって、ちょっとでも思い出してくれたら」と練習を見守る。「この年になって、子供から野球の楽しさを教えられている」と話す笑顔は、甲子園での爽やかな表情のままだ。(中野裕美子)
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◆坂本 佳一(さかもと・よしかず)1961年11月9日生まれ。名古屋市出身。東邦入学後に投手を始め、1年夏にエースとして1977年夏の甲子園で準優勝。法大から社会人野球の日本鋼管に進み、現在は岡谷鋼機株式会社名古屋本店で勤務。
◆ペイフォワード 愛知県尾張旭市渋川学区で2007年に誕生した少年少女軟式野球チーム。「子供たちに野球が好きになってほしい」という思いを基本方針とし、渋川小グラウンドなどを拠点に活動している。礼儀、チームワークを重視した指導を行う。高学年の「Aチーム」は各大会で上位成績を残している。チーム詳細、体験会などについては下記ホームページ。
http://www.team-payforward.com/payforwardNEW/