Jリーガーの自分を見切り売上315億円の社長に 嵜本晋輔氏「費用対効果低かった」

 東京・品川を望むオフィスは、壁が少なく開放的な雰囲気が漂う。18年8月決算での売上高は315億円。ブランド品・貴金属などの買い取り店「なんぼや」を手がけ、リユース業界で躍進する株式会社SOUを率いる嵜本晋輔社長(37)は、約15年前、サッカー界でもがいていた。

 高校卒業後、01年にJ1G大阪に加入したが、3年間で戦力外。JFL佐川急便大阪に移籍したが、「やっぱり、自分が想像していたプレーができない」。約3カ月間、「日々、自問自答」した末にたどり着いた答えが「自分を客観視」することだった。「時間を投資して、その分のリターンを得られるかと考えた時に、あまりにも費用対効果が低かった」。サッカー選手としての自分に見切りをつけた。

 父が営むリユース業の世界に飛び込み、給料も「20万とかからのスタートでした」。誰よりも早く出社し日経新聞で経済動向を勉強したり、異業種の人との人脈を広げたり。兄弟3人で立ち上げた会社で09年以降にリユース事業を任されると、11年12月には株式会社SOUを設立。質店のイメージがついていたリユース業界でネットを活用したサービス展開や、店舗デザインの面で「洗練された買い取り店に」することで、広く受け入れられるようにした。スマホで撮影した品物の市場価値が分かる「miney」など、アプリ展開も意欲的だ。

 仮想通貨・暗号通貨を筆頭にアプリや、金融情勢に至るまで仕事にまつわる技術はめまぐるしく変化する。「アンテナびんびんに取り入れる努力はしています」と言い切る社長を突き動かすものは「危機感」だという。「絶対人間にはないといけないものなんですよ。人間って基本的になまける生き物なので。それ(危機感)といいお付き合いをするかどうか」。ニュースを読み、人脈を広げて新たな世界に接しても「情報に触れるということは、もう数週間とか、数日前に起こっていることじゃないですか。情報に触れている時点で、かなり遅い」と感じるというから徹底している。

 もしも、今、かつての自分と似た境遇の人にアドバイスするとしたら?この質問に「僕も偉そうに言えないですし…」と考えながら、「『株式会社・自分』みたいな感じで、自分というものがマーケットで売れるか、売れないかということを見ていかないと」と提言する。

 「僕は続ける人を否定しているわけではなくて、続ける人は続ける人でもちろん応援はしています。その人たちが過去を振り返って、ほんまに良かったと思えるような人生を送っていれば、の話なんですよね」

 今、注力しているのはクラウドファウンディングとネットオークションの要素を掛け合わせたサイト「ハットトリック」。古巣・G大阪の協力を受け、今季開幕戦の先発メンバーが着用したユニフォームを「鑑定書」付きで出品し、売り上げを社会貢献に役立てる、という試みをした。「ファンもうれしいし、クラブもうれしいし、選手もうれしいし」という多方の人が喜びを感じる事業に育てることが目標だ。

 今はそのG大阪のスポンサーを務め、“恩返し”もしている。「サッカーの厳しさのようなものを教えてもらったのはガンバが初めてでしたし、ガンバに入っていなければ、そういう経験すらできなかったし、今の自分はないと思っているので」。自分と向き合ったからこそ、未来へと進めている。(デイリースポーツ・広川継)

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