五輪エンブレムと日本の歴史…市松とは
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は先日、都内で一度白紙撤回された大会公式エンブレムの再選定最終審査を行い、五輪とパラリンピックが一対になった最終候補4作品の中から、A案の「市松模様」を選出した。だが最終4候補が発表されて以降、一部で「A案ありき」の審査という報道があったことに、宮田委員長は「我々は公明正大に審査を行ってきた。発表前にそういう考え方をまかれたことを大変腹ただしかった」と語気を強めていた。この騒動にハイヒール・リンゴは騒動を認めながらも、「決まったことなら建設的に」と呼びかけた。
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エンブレムでA案ありきだったのではとも言われていましたよね(※1)。もともと最終選考に3つ残っていて、そこに次点にも入っていなかった作品が1つポンと入ってきて、その時点でもめるんやないかと言われていた。実際、その通りになってしまいましたね(※2)。
私も知らなかったけど、オリンピックのエンブレムの話をしたときに、専門家の人に教えてもらったことがあるんです。ABCDと並んだ時は「A」に先入観が働きやすく、左右非対称なデザインはエンブレムには不利。さらに印刷物は色数が少ない方がコストダウンするので、今回決定したデザインのように2色がいい。今回最終選考の4案を見ると、専門家が言っていた通りに、2色で左右対称のデザインに当てはまるのはA案しかなかった。だったらこれは出来レースじゃないのかって言われるのは、仕方ないと思いました。実際、ネット上も「A案ありき」と言われていたしね。
でも私自身は、A案が好き。市松模様が好きなんですよ。B案の輪っかはちょっと地味。C案の風神・雷神はわかりにくい。D案の朝顔という花は、原産が中国ですしね。
それに対してA案は市松模様がモチーフ、これはチェッカーフラッグと同じ柄。日本では市松模様というけど、なぜそういう名前で呼ぶのかといえば、江戸時代の佐野川市松という歌舞伎役者が舞台で愛用した柄だったから。そこからこの模様が「市松」と呼ばれるようになったそうです。今回のエンブレムのことがあり、由来を調べて初めて知りました。そんな風にこのエンブレムから、日本の歴史を知ってもらうのにはいい機会じゃないかな。だからこの市松模様のA案に決まったのはいいと思います。
でも、この選考過程はどうだったのかなと。はっきり公開しておかないと、また前と同じようにもめるんじゃないかなと思います。でもね、もうエンブレムはA案に決まったんです。その決まったことに「あかん、あかん」と否定的に言うのはどうかな。決まったことなら肯定的に、建設的に言っていきたいですね。
※1 旧エンブレムの審査委員を務めたデザイナーの平野敬子氏が自身のブログで「『A案』ありきのプレゼンテーション」と言い切った。「色彩」「基本形状」「造形モティーフ」「コンセプト」のすべての点で、A案が他の3案と「差別化」されているという。 ※2 組織委員会は1月に選出した上位4作品と次点4作品の計8点から最終候補を選ぶとしていたが、最終発表された4作品の中に 次点にも入っていなかった作品が“繰り上げ”選ばれた。