プロレスの時代が来た!
最近“プ女子”と呼ばれるプロレスの女性ファンが増えている。特に2012年、カードゲーム会社のブシロードの木谷高明社長が新日本プロレスリングのオーナーとなったことで潮流が変わり始めた。プロレスラーのキャラクター付けをはっきりしたことで、新しいファンも獲得。その一方で「飲み会で上司にされて困る話題1位」にプロレスが選ばれている。25年前にプロレス観戦をはじめ、実は熱烈な格闘技ファンのハイヒール・リンゴはその魅力を語った。
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とうとうプロレスの時代が来ましたね!今の新日本プロレスは戦略が優れてると思います。これまでは結構山あり谷ありでしたが。ゲームと連動させて、一人ひとりにキャラクターをつけてということで、業界での一人勝ちになってる。動員もすごくて、いまは本当に良い席のチケット入手が困難になってきてるんです。私は後輩のお笑い芸人のビーフケーキの近藤君と見に行ってるんだけど、やはりそこは先輩。近藤君の分までチケットを担当しているんです。リングサイドなんてなかなかの値段するけど、それでもやっぱり近くで見たいのが、ファン心理ですから。
私は25年位前に見始めて、結婚してしばらく見に行ってなかったんですよ。旦那がサラリーマンだったんで、土日の夕方に興行が多くて家を空けにくくて見に行かなくなってしまいました。でもやっぱり「プロレス面白い!見たい」という気持ちがふつふつを湧き起ってきたんですよ。当時一緒に見てた人たちも、ちょうど子育て終わった時期だったんで、また一緒に行こうかと。ネット社会のいいところでSNSでつながって、ここ2、3年また見に行き始めました。
私は柴田勝頼選手のストロングスタイルが好きですね。お父さんは柴田勝久という元レスラーで、私がプロレスを見始めたころにレフリーをやってた方なんですよ。あとは、スーパージュニアで真剣勝負した田口隆祐選手、外国人レスラーのリコシェ選手。アントニオ猪木さんの後から見出したんで、アントニオ猪木vsジャイアント馬場の世代ではないんです。そのあと闘魂三銃士がいて、その次、永田裕志選手、小島聡選手の世代を経て、いまの世代になった。オカダ・カズチカ選手にしても棚橋選手の世代交代にしても、新日はすごいと思います。
プロレスをスポーツじゃないと言う人がいますが、私にとってはプロレスはスポーツであり、エンターテイメントなんですよ。私が何で好きになったかというと、リングというのはあらゆる方向から見られている舞台なんです。例えば私が出演するNGKのステージだったら、アピールしなければいけないのは。自分たちの前面に座っているお客さんだけ。もし私がちょっと笑うふりして体を後ろに向けてそこで何かするとします。でもお客さんには後ろに振り返った私が何をしているかわからない。でもプロレスは360度見られてる。全方位のお客さんを相手にしているんです。何千人、会場によっては何万人というお客様が見ている中で、対戦相手と盛り上げていって、技を決める。そこにあるのは自分と対戦相手のの肉体感性のみ。ほんと、ゾクゾクしてしまいます。それが私のプロレスの楽しみ方。プロレスの試合結果は最初から決まっているんでしょ、なんていう人がいますが、そんな事言ってちゃあ、プロレスは楽しめませんよ。
ハプニングも満載でみんな「ええっ!そうなる!?」と驚く。そんな楽しみもあるんですよ。私にはまだ無理ですが、古参ファンになるとそれぞれの戦いの背景や抗争が全部わかっているから、マッチメイクが発表された時点で、この試合は○○が勝つ、あの試合は△△が勝つと勝手に楽しく予想するんです。マッチメイクの妙を読む楽しみもあるんですよね。私はまだそこまでいってないから、「リコシェ選手、格好ええわ~」のレベルですけど。
世代で流行るレスラーも違うし、でもプロレスは基本、やっぱり太マッチョだと思うんです。いま世間的には細マッチョが来てるから、キックとかムエタイなんか流行ると思うんですよ。タイに行ったとき、ムエタイすごい人気でしたからね。ハイキック試合が派手で、面白いですよ。
この前、なにかで見たのですが、若い人が飲み会で、「上司が盛り上がりがちだけど面倒くさいと思う話題」の1位は昔のプロレスなんだそうです。2位が昔のプロ野球で、3位が昔のガンダム(笑)。大体自分が知らない上司の趣味の話を振られてもわからないじゃないですか。でも例えば、相手が麻雀知らないと、麻雀の話はしないでしょ。けどプロレスファンは、相手が知らなくても自分のプロレス観を熱く語るんですよ。阪神ファンと共通してるんかな。宝塚とも共通してるかな?とにかく何で好きか、どれだけ素晴らしいかをわかってもらおうとするんですよ。
最近の大阪での興行試合はほぼ見に行ってますね。さらにドラゴンゲート(別団体)見にいかへん?とか、中邑真輔選手がWWEで大阪来るから見に行けへんか?とか、プロレス仲間からどんどん情報が回ってくる。もしそれを全部行こうとしたら日に2、3回はあるんです。さすがにそれは無理。だから今はいいと言われるマッチメイクのときに近藤君やプロレス仲間と行って、背景とか色んな事を聞いて勉強してます。何の勉強かわからんけど(笑)。
いま今何が楽しいって、プロレス見ているときが一番楽しいですね。テレビ朝日が夜中に『ワールドプロレスリング』って番組やってるんですが、試合観戦している素の私が映りこんでいたらしいんですよ。私がプロレス好きって知らない子からも「映ってる!」って驚きのLINEが来ました。
昔はそれこそ長崎まで見に行っていたし。G1クライマックスと言う両国国技館で7連戦も見に行ってました。『週刊プロレス』も毎週買ってたし、『ゴング』とどっちがいいかなんて仲間と話もしてました。いまはそこまでは熱くないけど、冷静に楽しんでます。楽しみ方の違いかな。それと変わった点と言えば、昔は高価と思っていたTシャツがバンバン買えることですね。ただそこそこの歳なので買っても着ていくところがないのが悩みです。
いろんなことが一段落したら昔の趣味を掘り起こすというのはいいんじゃないかなと思います。私はそれがプロレス観戦。私はほんま、プロレス大好き。今、プロレス好き女子の呼称「ぷ女子」の賛否や、プロレスの楽しみ方の是非がネットでも盛り上がっていますが、棚橋弘至選手も自身のツイッターで「プロレスを好きになるのに形はない。どんな形であれプロレスに興味を持ってもらえる事が何より嬉しい。誇れるプロレスをするから。ありがとう。ありがとう。ようこそプロレスの世界へ☆」と綴っておられるように、楽しみ方は千差万別。自分と違う個性を否定し、攻撃するのではなく、へぇ、こんな楽しみ方もあるんだ、と相手を肯定するのも大事だと思います。