アキラ100%の「裸芸」 歌丸師匠の問題提起に思うこと
笑いの世界は、連綿と続く線上で動き続けているというハイヒール・リンゴ。昔は怖い師匠方が多かったが、いまは誰もが“いい先輩”になりたがる風潮があるという。それだけに落語家の桂歌丸がアキラ100%の裸芸に対して問題提起は「すごいこと」と評価。自身も含めた、若手へのあり方、発信について語った。
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桂歌丸師匠が、アキラ100%君の芸に対し「裸でお盆を持って出てきて何が芸ですか、と思う。日本語を使って笑いを取るのが芸人」とおっしゃったことは素晴らしいと思いました。
今回、歌丸師匠が発信されましたが、師匠がおっしゃるのを「時代」と受け取るのか、「叱咤激励」と受け取るのか、「批判」と受け取るのか、「恐怖」と受け取るのか、言われた側の考え方、受け取り方で大きく変わってくると思うんですよ。決して個人的に憎くて言っているわけじゃない。一つの芸というものへの先輩から後輩への提案ですから。
私も漫才という話芸で、肩書も“お笑いタレント”ではなく“漫才師”だと、こだわりをもっている。でも言葉の壁があるから海外出られないんですよ。でもアキラ100%君はボーダレスな可能性がありますよね。
いま師匠方が優しくなり過ぎてると思います。私たちが若いころはもっと師匠って怖かったですよ。いまは若手のこと「わかる、わかる」という師匠が増えてきた。師匠方はもちろん、私たちの年代も、もっと色んなことを発信していった方がいいんだろうなと思います。
昔、中田カウス・ボタン師匠がGパンで舞台に出られた。漫才師はお揃いのスーツを着て出なきゃいけない時代に、衣装という一石を投じたんです。その後はダウンタウンなどをみても分かるように、コンビでも全く違う服を着るようになりました。ところがまた、銀シャリとかトットみたいに、敢えて服をそろえたコンビも出てきている。こういうことは、連綿と続く線上で常に動き続けているんです。
だからその線上にいる私たちも、後輩に言わなあかん。“うざい先輩”って必要なんです。後輩に嫌ごとを言うって、パワーもカロリーもいるんですよ。だれもが“いい先輩”になりたいですから。だからこそ、歌丸師匠のような方が、敢えて問題提起するってすごいことなんです。一石を投じ「話芸とは」って。それもちゃんと御自身でオチをつけられて「声は出ますよ。出なきゃミイラです」って自虐的なこともおっしゃって、ほんとうにすごいなと思いました。
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ハイヒール・リンゴ 1961年8月9日生まれ、大阪府枚方市出身。NSC1期生。モモコとコンビを結成し83年デビュー。95年上方漫才大賞受賞。テレビでも多くのレギュラーを持ち、その司会術や仕切りのうまさには定評がある。10年から大阪学院大学で金融論を学び、名誉博士号を授与される。