芸人なら自分自身の言葉を考えるべき
テレビ番組で人気の、タレントによる食レポでよく使われるフレーズの一つが「優しい味」。だが言葉のプロであるハイヒール・リンゴは、若手の女性芸人にその「優しい味」をなるべく使わないようにとアドバイスを送った。その真意とは-。
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私が応援し、月1回のペースで開催しているイベント「女芸人大祭り」。尼神インター、ゆりやんレトリィバァ、その後にガンバレルーヤも頭角を現しています。さらに何組か続く若手女芸人もいます。
その彼女らが番組で食レポをするとき、私は「優しい味」という言葉を使わないようにと言ったんです。するとなぜか「リンゴさんは『優しい味』と言ったら怒る」って言われてしまってる。違うんです。私が使わないでと言ったのには意味がある。
もともとこの「優しい味」を使い始めたタレントさんから聞いたんですが、これは「味がぼけていて、褒めようがない。苦肉の策で出た言葉だった」と。ところが世間ではいつの間にか褒め言葉に変わってしまった。「ヤバい」という言葉も、本来は悪いことに使っていた。だけど今では若い人は、いいことにも使っている。それと同じなんですよ。
それを聞いてしまったので私は「優しい味」という表現にはずっと違和感があったんです。ましてや若手後輩芸人も、言葉を活かす仕事なんだから、自分自身の言葉で考えなきゃ。食レポに行くなら、家で10個くらいフレーズを考えてきなさいと言ってるんです。それが芸人の仕事なんです。せっかくチャンスを与えてもらって「優しい味」という言葉で逃げるなと言いたい。自分らしい言葉で表現しなさいと。
決して「優しい味」が嫌いなわけでも、怒っているのでもないんです。せっかく番組に使ってもらっているんだから、面白い芸人だなと思ってもらえるようにしなきゃ。ところがキチンとそれが伝わっていない。「使うな」という部分だけ切り取られてしまっている。
先日、ある若手の芸人が食レポで「これかけ算でも引き算でもなく足し算の味ですよね」と言ってるのを見ました。そうした言葉は、その場でとっさに出たんじゃなく、現場に来るまでに表現をいろいろ考え、準備してきた中の一つだと思うんです。その準備によって使う側、見る側も「あの子は言葉巧みに使うよね」という印象を与えると思うんだけどなあ。
若手が「爪跡を残す」とか、よく言ってるじゃないですか。何も準備しなくて、その場で爪跡を残せるのは天才だけ。私は言いたい。爪跡を残したいんなら、家でちゃんと爪を研いでこい!と。でもこれを言うとまた「リンゴさん怖い」って言われるんです(笑)。