島根県知事の聖火リレー中止検討発言「気持ちは理解できる」…もう少し地方や現場思いやって

 今夏の東京五輪・パラリンピックをめぐり、島根県知事が「このままの状況が続くのであれば聖火リレーも中止せざるを得ない」という考えを表明されました。私もPR大使を務めさせていただいている大阪・枚方市の市民ランナーとして参加する予定ですが、きっと苦渋の選択を提示されただろう知事のお気持ちは、理解できるものでした。

 聖火リレーは自治体との共同事業ですし、警備費や離島への交通費などは自治体が負担するそう。この機会に世界中の人たちに郷土を見てもらい、アピールしたいーという地元や企業の強い思いを胸に多くの著名人や芸能人がランナーに選ばれ、島根でもニッチェの江上敬子さんらが走る予定になっています。

 それなのに、終わりの見えないコロナ禍に加え、ここに来ての森喜朗会長の“女性蔑視発言”をめぐる組織委員会の混乱。一応、聖火ランナー予定者には、聖火ランナーデスクから今回の事態を謝罪するメールも届きましたが、みんな心の中では「どうなっているのだろう」「どうなるんだろう」と不安を抱えながら、それでも夢をあきらめず、トレーニングを続けている方も大勢おられます。

 都市部と違い、確保病床数も少ない地方では、人の流れに伴って感染が急拡大したり、大規模なクラスターが発生したりすれば一気に医療崩壊が起きかねません。本音はきっと、みんなやりたい。でも、人々の命を危険にさらすわけにはいかない。そんな苦しい、関係者みんなの気持ちを代弁されたような、勇気ある発言だったと思うのです。

 「中止する」ではなく、あくまで「このままでは中止もありうる」であり、いわば“地方やランナー軽視”とも取られかねない現状への警告だったと思います。それなのに、この発言に対して政府高官が不快感を示したというニュースが。これは、あまりにも「上から目線」ではないでしょうか。そして更に自民党島根県の重鎮からは「知事を呼び注意しないといけない」と発言。どの立場から誰を注意されるのか。本当に「中央が上から地方を見下す目線」と言われても仕方のない発言内容です。

 一方でマスコミも、五輪開催は難しいと散々煽るような報道をしたかと思えば、中止検討が報じられれば、ランナーに「走りたいですよね?」と意見を求める。さまざまな意見を伝えることは確かに必要ですが、私も情報番組に関わっている立場ながら、その報道の方向性が最近はあまりにも露骨な感じがします。それでいて、世の中の大勢を占める意見と違うことを言うと、言った人が総攻撃されることもしばしばです。様々な意見を認めあってこその「多様性の時代」ではないでしょうか。世の中の怒りの沸点が低くなっていると感じます。

 G7も日本の五輪開催決意を支持する表明をしました。五輪を本当に開催するなら、政府ももっと地方の思いを汲み取って、感染拡大防止策を示してほしい。そして、皆で誰かを攻撃するのではなく、どうしたら少しでも安心して開催できるのか、一緒に考えるべきだと思うのです。

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