九ちゃんは人形劇「新八犬伝」で名調子
あの忌まわしい日航機墜落事故から30年。テレビ番組でも雑誌の特集でも、あの夏、我々の前から突如姿を消してしまった坂本九さん(以降、九ちゃんと書かせていただきます)について語られる機会が多い。
世界的大ヒット曲「上を向いて歩こう」を軸に語られることが多いが、あの曲が大ヒットした昭和30年代を知らない、昭和40年代に生まれた私の年代からすると、九ちゃんと言えばNHK人形劇「新八犬伝」(1973~75年)で名調子を轟かせていた黒子役のイメージが強い。黒子といってもバスケではなく、「欽どこ」における関根勤でもない。「黒子=九ちゃん」だったのだ。
曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」をベースとしたこの人形劇。主役は人形師・辻村ジュサブロー(現・寿三郎)の手による八犬士。番組の前後に九ちゃんは○の中に九と描かれた黒布で顔を覆いつつ(よく顔出しもしていた)、「めぐるめぐる、めぐる因果の糸車~」などと名調子を響かせていたもの。この人形劇と九ちゃんの名調子がなければ「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」なんて立派な言葉とは一生無縁な「忘八者」にでもなっていたことだろう。
と、ここまで書いていて気が付いたのだが、九ちゃんがこの番組で黒子役を演じていたのは「八犬士に続く九番目の犬士」という意味合いだったのか?つまりウルトラセブンが6名よるウルトラ警備隊の「7番目の戦士」という意味の命名だったり、サッカーのサポーターが「12番目の選手」という意味で背番号12を着けていたりするのと同じニュアンスだ。
そう考えると、数少ない九ちゃんの子ども番組仕事の一つである米国産アニメ「科学少年J・Q」(日本放送は1965年・TBS系)の主題歌も「♪ジェーキュー、ジェーキュー、ジョニー・クエスト~」も、単なる「Qと九」つながりのダジャレ人選だったような気までしてくる。
昨年、「アウト×デラックス」(フジテレビ)にゲスト出演した辻村寿三郎が、衝撃のオネエ告白したことが話題となったが、それらを踏まえて、改めてDVD等で「新八犬伝」を再見すると、恐怖とおどろおどろしさの象徴であった八犬士最大の強敵「玉梓の怨霊」の妖気ムンムンの風貌にも、これまでとはまた一風違った恐怖を感じてしまう。本日、これまで!