久保隼×坂口佳穂(3)彼女はいらっしゃるんですか?

 チャンピオンベルトを肩にかけてもらい笑顔を見せる坂口佳穂(左)と久保隼(撮影・石湯恒介)
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 ボクシングのWBA世界スーパーバンタム級王者・久保隼(27)=真正=が9月3日に予定する初防衛戦を前に、ロングインタビューに応じた。ビーチバレーで2020年東京五輪出場を目指す坂口佳穂(21)=マイナビ=が今回インタビュー取材に初挑戦し、王者の秘密に迫った。終盤、“ビーチの新妖精”が動いた。プライベートにも踏み込み、“ポスト長谷川穂積”としての道を歩み始めた王者を丸裸にした。

  ◇  ◇

 ▼趣味

 坂口「じゃあ、ちょっと話を変えて。ボクシング以外で興味のあることはありますか」

 久保「それがねえ…取材とかされている方は分かっているんですけど、何にも興味がなさすぎて、終わってるんですよ(笑い)」

 坂口「終わってはないと思うんですけど」

 久保「いや本当に休みの時も寝ているだけやし。お風呂行くか、マッサージ行くか、そんなんですよ」

 坂口「テレビとか見ないんですか」

 久保「テレビ、僕の部屋ないんですよ」

 坂口「わざと置いていないんですか」

 久保「いや、あったら一生見るんですけど」

 坂口「なかったら一生見ない」

 久保「一生見ない。小さい頃はテレビのない生活なんて考えられないと思っていたんですけど。なくても全然いい。だから世間に付いていけないんです」

 坂口「そうですよね。ニュースとかはどうするんですか」

 久保「そんなことあったんやっていうこと結構ありますよ」

 坂口「新聞とか読まないんですか」

 久保「読まないんですね、これが(笑い)。いや、携帯で読みます」

 坂口「YouTubeとか動画とかは」

 久保「ボクシングしか見ないですね」

 坂口「映画を見たりは」

 久保「昨日、映画館に行くか行かんか久しぶりに迷ったんですよ。『22年目の告白』を見ようかと」

 坂口「はい。すごい面白いっていいますよね」

 久保「めっちゃ迷った挙句、お風呂行きました(笑い)」

 坂口「お風呂を優先した」

 久保「疲れをとることの方が大事やなと思って。僕は普段、友達の誘いとかも面倒くさい感じで。遊びに行ったら次の日の朝練がしんどいなって思ってしまう。だから大学生活も、渋谷とかあんなんに行ったのも、4年間でほんまに10回もあるかなっていうくらいですね。全然興味なかったんです。だから飲み会とかに呼ばれても、僕はお酒も飲まへんし、基本的に避けていました。僕だけ何も参加していないんですよ」

 坂口「じゃあリフレッシュとかはどうするんですか」

 久保「それもお風呂かマッサージですよ」

 坂口「そこがリフレッシュになるんだ。じゃあ興味のあることはお風呂でいいですか。温泉に行ったら何時間くらい入っているんですか」

 久保「その日によって全然違います。昨日は3時間。源泉のお風呂ではずっと入れるんですよ」

 坂口「3時間も温泉に入るんだったら確かに映画も見ることができないですね」

 久保「そんな感じの生活しています」

 坂口「すごい。私ちょっと考えられないです」

 久保「みんなに言われます。遊んだ方がいいとよく言われるんですけど、自分が遊びたいと思ったら、遊んだ方がいいのかもしれないんですけど、そこまで気が向かないですね」

 坂口「気が向いた時ちょっと気になりますね。どんな遊び方をするのか」

 ▼ビーチバレー

 坂口「じゃあビーチバレーについて。興味あったりします?」

 久保「興味というか、僕らも砂浜で合宿をしたりするんですよ。走っている時に進まなさ過ぎてイライラするんですよ。その上でバレーボールをするわけじゃないですか。それがすごいなって思います。僕ら以上に足腰相当強くないと無理でしょ」

 坂口「でも慣れも大きいと思います。最初私も1カ月間スパイクも打てなかったし、跳べなかったし、走れなかったです」

 久保「今回の淡路島合宿で後輩も初めて砂浜走って、『こんなんやりたくないです』と言っていました。『この上でやってる競技ってすごいよな』って話をずっとしていたんです。どんな思いでやってるんやろなと思って」

 坂口「どんな思い。でもたまに選手同士で、真夏にましてや砂の上で、2人で『バカじゃないのか』って言ったりもしますよ」

 久保「ああ、ボクシングで言えば、僕もなんでこんな減量しているんやろう、なんでこんな殴られることしているんやろうと思うのと一緒ですね」

 坂口「そうです、そうです。同じ感覚だと思う。たまにありますよね」

 久保「ビーチバレーは砂の上であんなにすぐ動けるのがすごいなと思います」

 坂口「確かにそうですね。でも見る人によっては、なんであのボール取れないのというのがあります」

 久保「ボクシングも一緒です。あんなの痛くないやろというのと」

 坂口「ありますよね。今の届くでしょとか」

 久保「砂浜とか、ばさっと足取られるのに取れるわけないやろと僕は思ってしまうんですけどね。スポーツ分かっているからかなというか、砂浜走っているからですかね」

 坂口「走ったりしたことない人はちょっとそう思っちゃう。ボクシングもテレビとかで見ると、痛そうだけど、そんな食らうみたいのたまにあるじゃないですか」

 久保「あんなん痛くないやろとか、お風呂場で会ったおっちゃんに言われると、『やってから言え』とは思いますよ」

 坂口「絶対そうですよね」

 久保「『まあそうですね』とか答えるんですけどね」

 坂口「ちょっと通じるものがありました」

 久保「そうですね。競技やらないと分からないですからね」

 ▼彼女はいらっしゃるんですか?

 坂口「最後に気になっていたことがあるんですけど。彼女とかいらっしゃるんですか?」

 久保「いや、もう当分いないですね」

 坂口「当分いない!」

 久保「はい、あの。昔から僕の周りで『ボクシングを理解する』という人はだいたいケンカしているんですよ、試合前に」

 坂口「彼女さんとケンカするってことですか」

 久保「そうなんですよ。それを見ていたら、今はとにかくボクシングだけには後悔したくないしって思いが強いです、僕は。休みの日に『どっか行こう』とか言われるのもしんどいので」

 坂口「なるほどね。彼女という存在よりボクシング」

 久保「今は、ですけどね。その中でもいい人と出会えれば、そういった気持ちにもなるだろうしとは思っていますけど。今はまだそこまで自分自身に余裕がないかなという感じですね」

 坂口「ちなみにどういう方がタイプなんですか?」

 久保「うーん、今で言ったら、料理でカロリー計算できたらいいかなと思いますけど(笑い)」

 坂口「そういうサポートしてくれる」

 久保「そうですね。試合前になって、こっちがわがままを言っても聞いてくれるんやったらいいんですけどね。結局それが通らなくてケンカになるんでね、だいたい。昔がそうやったんで」

 坂口「試合前は当たっちゃったりするんですか」

 久保「当たりはしないですけど。『休みの日くらいどっか行こうや』って言われた時はしんどかったなとか」

 坂口「そこも理解できて、カロリー計算もできて、料理ができる人。ボクシングを理解して応援してくれる人」

 久保「一番ありがたいですね」

 坂口「なるほど…。参考にします。今日は本当にありがとうございました。防衛戦頑張ってください」

 久保「はい、頑張ります。ありがとうございました」

  ◇  ◇

 久保隼(くぼ・しゅん)1990年4月8日、京都市出身。元アマチュアボクサーの父憲次郎さんの影響で中学2年からボクシングを始める。南京都高(現京都広学館高)3年でインターハイ準優勝。東洋大を経て13年5月にプロデビュー。15年12月に東洋太平洋スーパーバンタム級王座を獲得し、2度防衛。17年4月に世界初挑戦でネオマール・セルメニョ(ベネズエラ)を11回TKOで破り、WBA世界スーパーバンタム級王座を獲得。戦績は12戦12勝(9KO)。身長176センチ。左ボクサーファイター。

 坂口佳穂(さかぐち・かほ)1996年3月25日、宮崎県串間市出身。小学1年から中学3年までバレーボール部に所属し、高校時代はダンス部に所属。同時にタレント活動も行い「BSブランチ」(BS-TBS)で「BSブランチガール」を務めた。14年4月に元ビーチバレー日本代表監督の瀬戸山正二氏理事長を務める「川崎ビーチスポーツクラブビーチバレーアカデミー」に入り、ビーチバレー選手として活動を始める。武蔵野大法学部政治学科在学中。今季のジャパンツアーは5位が最高。身長172センチ、体重58キロ。

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