電車が止まるとテレビ局にも影響が…
4月12日、支柱が倒れて東京のJR山手線が止まる事故があった。山手線、京浜東北線がストップし、全線復旧まで6時間ほどかかった、あの事故だ。日曜日とあって通勤の足には大きな影響は出なかったが、意外なところが、その影響を受けていた。
テレビ局の宣伝部である。
電車の外装や中吊りが、一つの商品の広告で埋め尽くされているのを見たことがないだろうか。最近では車内ビジョンの動画なども流れる。テレビ局でも新番組の時期などにこの“電車広告ジャック”をやることがあるのだが、当日、山手線ででこれをやっていたのが、日本テレビだった。電車内に「Dr.倫太郎」「ワイルド・ヒーローズ」「ドS刑事」のドラマ3本の中吊り広告を掲示し、車内ビジョンでPRスポットを流していたという。
電車が止まった時点で、JR東日本から広告の担当者には連絡が入った。「電車が止まった」と聞き、担当者は、最初、「客が閉じ込められたのかと思った」のだそうだ。
実はこのような“閉じ込め”事故の場合、広告効果には影響がない。むしろ、閉じ込められた人たちが、気分を変えようと車内を眺め、広告を見るため効果は上がるのだとか。
だが、今回は無人でのストップ。当然広告は誰も見ていない。
だからといってただでは転ばないのがテレビ局。掲示期間の延長があるかと担当者は「あのー、何かサービスはないんでしょうか」とJRに聞いてみたのだという。だがJR東日本の担当者は「全線開通には6時間かかりましたが、事故の1時間後から区間運転は行っております。完全に誰も乗っていなかったのは1時間だけです」とキッパリ断られたそう。日テレの担当者はボヤきまくっていた。
電車の車内広告は、JR、私鉄、地下鉄などの会社はもちろん、同じJRでも路線によっても値段が違う。中でも1日300万人以上が利用する山手線は、最高ランクの広告料金。中吊りだけでも1週間で数百万円かかる。6時間とはいえ無駄になったのだから、日テレの気持ちも分からなくはない。だが、もし6時間ちゃんと掲示されていたら、視聴率はどのくらい変わっていたのだろうか…。
(デイリースポーツ編集委員・原田智恵)