大橋会長が珍指令「八重樫よ逃げろ」
「WBC世界フライ級タイトルマッチ」(5日、代々木第二体育館)
WBCダブル世界戦の調印式と会見が3日、都内のホテルで行われた。4度目の防衛戦となる王者・八重樫東(大橋)に対する大橋会長のアドバイスは「逃げ回れ!」。アマ・プロ通算126勝の最強挑戦者・ゴンサレスの神経を揺さぶった。初防衛戦に臨む井上尚弥(大橋)、プロ5戦目を迎える村田諒太(帝拳)はともにKO勝利を宣言した。
何人もの王者が対戦を避けてきたゴンサレスに対する戦術的アドバイスを聞かれた大橋会長は「ただひと言。ゴングが鳴ったら走って逃げ回れ、と言ってあります」と即答した。
隣で八重樫がガックリしたポーズを見せ、爆笑が会見場を包む中、同時通訳に耳を傾けていたゴンサレスだけが複雑な苦笑いを浮かべていた。大橋会長のジョークは挑戦者には通じなかったようだ。
「大変いい助言だと思う。自分はこの試合のために、最高のコンディションをつくってきた。9月5日は試合というより戦争になる」と、公開練習でも口にした「戦争」という言葉を改めて使うなど、闘争心むきだしで応じた。
母国の英雄で、師匠の故アレクシス・アルゲリョ以来の3階級制覇がかかるこの試合を「自分の人生、夢をかけて臨む」大一番と位置づけている。来日以来、穏やかな顔を見せていた挑戦者が「逃げ」という言葉を聞いた途端、初めて違う顔を見せた。「逃がさない」と言っているようだった。
もちろん、八重樫に逃げ回るつもりなどかけらもない。「強い選手に勝ち抜いてこそ、本当のボクサーであり、チャンピオン」と断言。ゴンサレス戦を想定して、約1年がかりで体をつくり上げた自負もある。
単なるジョークか、計算された陽動作戦か‐大橋会長が公式会見で明かした「逃げ回れ」指令は、この日のゴンサレスを明らかに揺さぶった。