石田順裕、誰もがあきれた波乱プロ人生

 最後は人気アニメ、妖怪ウオッチ「ジバニャン」のベルトで現役に幕を引いた。ボクシングの元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者・石田順裕(39)が6月19日に引退を表明。本人が言う通り、「誰も経験できない」15年の波乱のプロ人生を駆け抜けた。

 188センチの長身でファッションモデルもこなしたイケメン。だけど、どこか三枚目…。ノブ石田は魅力あふれるボクサーだった。

 東洋太平洋、日本王者となり34歳の09年8月、中量級の日本選手では快挙となる世界王座を奪取。海外に活躍の場を移した11年4月、米ロスで行ったジェームス・カークランド戦で世界を驚かせた。当時27戦全勝(24KO)の相手から1回に3度ダウンを奪い、TKOで撃破した。

 米国では「石田?カークランドに勝った石田か」と言われる世界で知られる日本ボクサーの1人。オスカー・デ・ラ・ホーヤが社長を務める大手プロモーター「ゴールデンボーイ・プロモーションズ」とも契約を結んだ。

 現役を日本で締めるべく指名したのがロンドン五輪金メダリスト・村田諒太(帝拳)。「勝っても負けても、それで終われた」と言うが、対戦を受けてもらえなかった。「すべては村田が誤算」と、考え抜いた挙げ句、誰もがあきれる、プロジェクトに打って出る。

 38歳にして何とミドル級から4階級も上のヘビー級に転向。20キロもの増量ボクサーが前代未聞なら、2度戦った日本ヘビー級王者・藤本京太郎(角海老宝石)との舌戦はまるで“プロレス”だった。

 石田がバレンタインデーにチョコレートを贈り、「ホワイトデーのお返しがない!」と挑発。京太郎陣営は「京太郎はフランケンシュタインになったから、石田は生命保険に入れ」と、やり返した。

 根っからの関西人の本石昌也会長、石田ともに「アホな」乗りが好きとあって、徐々におもしろさを追求。最後の試合となった4月30日を前に、京太郎には「ジバニャン」を貼り付けた手作りのベルトをプレゼントし、爆笑!?を誘った。

 試合結果は判定負け。「あれは会長がやりすぎた。ジバニャンベルトがジャッジに影響したに決まっている」と石田は恨み節。「京太郎に贈るはずのジバニャンベルトをまさか持ち帰ることになるとは…。今は僕の子供が気に入って遊んでる」と本石会長は笑った。

 不世出のボクサーには、もっと感動的でかっこいい最終章もあっただろう。しかし、石田は言う。「ヘビー級に挑戦してからの方が覚えてもらえるようになった。街で声もかけられるし、取り上げられることも増えた。それまでは世界王者でも全然でした。盛り上げていただきありがとうございます」。

 第2の人生は故郷の大阪・寝屋川市でアマチュアジム会長に就任する。五輪選手の育成が目標と言う一方で、「(美人女優の)北川景子と飲み会がしたい。まだ一歩も近づいていない。ウィッシュ!」と目を血走らせた。

 シリアスからコメディーまでこなし、世界で暴れたエンターテイナーは8月2日、大阪府立体育会館で引退セレモニーを行う。(デイリースポーツ・荒木 司)

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