“最強王者”キース・サーマンの戦う理由 大の好日家…趣味は神社仏閣参拝

 日本滞在中の楽しみのひとつが神社仏閣巡りというキース・サーマン。この日も滞在先付近の神社を散策した(撮影・出月俊成)
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 WBA・WBC世界ウエルター級スーパー王者、キース・サーマン(28)=米国=の独占インタビューをお届けする。3月4日に2団体統一に成功したばかりの王者は、ウエルター級史上最強を目指している。プライベートで来日したサーマンは大の好日家。神社仏閣への参拝が趣味という意外な素顔も見せてくれた。約束の場所に現れたサーマンは、ラフなスタイル。黒いハットから長く縮れた髪が流れていた。「やあ、よろしく頼むよ」と低く落ち着いた声で手を差し出した彼は、プロボクサーというより映画俳優かロックスターと見違えんばかりだった。

    ◇    ◇ 

 -今回の来日の目的は。

 「統一戦という大きな仕事を終えたばかりなので、体を癒やすためのバケーションタイム。日本に来たのは3回目だね」

 -日本のどこが好きか。

 「まず、とても平和的なところ。2番目はファッション。去年の10月、最初の来日でファッション性の豊かさに驚いた。引退後はファッション業界で生きていこうと考えているので興味がある」

 -食べ物は。

 「すし、しゃぶしゃぶ、焼き肉の順に好き。ラーメンもいいね」

 -今回は後楽園ホールでボクシングの試合も見た。

 「2度目の来日で日本のボクシング関係者と接して、もっと日本のボクシングを知りたいと思った。メインはオータケ(大竹秀典=金子)だったね。若いフィリピン人が果敢に打ち合いにいって、3ラウンドくらいはフィリピン人が取ったけど、大竹の経験が勝ったんじゃないか」

 -ボクシングを始めたのは。

 「7歳のとき。4歳のころから父とテレビでジャッキー・チェン、ブルース・リー、それからスティーブン・セガールの映画を見てマーシャルアーツに興味を持ったんだ。7歳のとき、小学校の課外授業でボクシングを初めて教わった」

 -最初の試合は。

 「9歳だった。RSC(レフェリーストップ・コンテスト)、第1ラウンド1分で勝ったよ。試合まで1年間練習したんだ」

 -型にはまらないスタイルはどうやって築いたのか。

 「ボクシングは21年間やっている。最初のトレーナーはベン・ゲッティ。彼が7歳から20歳まで教えてくれた。彼は7年前に亡くなったが、強い選手になるように心と体を鍛え、それから頭を使うことも教えてくれた。厳しいトレーナーだったから(自分以外)みんなついていけなかった。完ぺきなボクシングをするよう教わったことは忘れていない」

 -すごいスピードとパワーだが、他のスポーツの経験は。

 「ボクシング以外のことをする時間はなかった。野球、サッカー、バスケットボール、アメリカンフットボールを遊び程度で一度ずつやった。フルタイムがボクシングだった」

 -ファイターとボクサー、やりやすいのは。

 「普通のファイターなら前に出てくるだけなのでだれでもKOできる。(16年6月の)ショーン・ポーターはしっかり技術を持っているので倒せなかった。アマチュアの時、すべてのスタイルの選手と闘ってきたので、どんなボクサーでも対応できる」

 -自分は完成されたボクサーと思うか。

 「試合が決まればそれに向けて調整する。スタイルを変えるつもりはないが、向上したい。まだまだ勉強中。新しいテクニックを加えながら、何か新しいことを学ばなければいけない。自分は無敗の王者だが、より偉大なファイターになるために努力している」

 -大事なトレーニングは。

 「スパーリングが一番。ミットワークも大事。それからコンディショニングだ」

 -ケガをしたことは。

 「10年11月の試合で左の小指を骨折した。14カ月試合ができなかった。針治療もした」

 -交通事故にも遭っている。

 「(16年2月)雨の中、運転中に車がハイドロプレーニング現象を起こしてスピンして他の車にクラッシュしたんだ。サイドバッグが破裂して首を痛めた。ポーター戦をキャンセルして6~8週間は治療に充てた。ハイウェーに乗る直前でラッキーだった」

 -ウエルター級のこだわりは。

 「アマの時にウエルターが一番合っていると確認した。147ポンドだけにこだわっている。アメリカのボクシングの歴史の中で有名な選手が過去に何人もいた。シュガーレイ、ハーンズ、メイウエザー-後になって彼らと比較された時、私が一番偉大なチャンピオンだと証明したい。そのために闘っている」

 -そのためにはさらなる統一戦が必要。

 「メジャータイトルのうち2つは取った。ナンバーワンを証明するためにWBO、IBFの王者と闘って統一したい」

 -次の試合は統一戦か。

 「いや、(IBF王者の)ケル・ブルックは5月末に試合をする。ポーター、ガルシアとタフな試合が続いたし、(WBO王者の)マニー・パッキャオは分からない。(4月に行われる)アンドレ・ベルト、ポーターによる挑戦者決定戦の勝者とやらなきゃならないだろう」

 -自分の強さはどこにある。

 「100回以上試合をして成長してきた。頭を使うことが勝利につながる。現在、世界で一番素晴らしいボクサーは自分だと思っている。負けることは怖くないし、だれとやっても負ける気がしない」

 -今回の日本滞在は約1カ月と長かった。

 「ショッピングや食事を楽しんだし、靖国神社にお参りして座禅も組んだ。20歳のときに仏教を勉強して影響を受けた。他にヒンズー教、キリスト教、ユダヤ教も学んだ。私は無宗教だが仏教が一番正しいと感じた」

 -仏教はボクシングに役に立つか。

 「瞑想(めいそう)して呼吸を整えているので、例えば1時間走っても疲れない。多くのアスリートが走るときにミュージックをイヤホンで聴いているが、私はノーミュージック。瞑想しながら走っている」

 インタビュー後、宿泊ホテル近くの日枝神社を訪れ、二拝二拍手一拝し、深く瞑想にふけっていた。

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