【長谷川穂積の拳心論】王者の「価値」防衛で高めて…ジム後輩に愛のゲキ
「ボクシング・WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(9日、エディオンアリーナ大阪)
同級8位の久保隼(27)=真正=が王者のネオマール・セルメニョ(37)=ベネズエラ=を11回5秒TKOで下し、世界初挑戦で王座を奪取した。日本ジム所属の男子選手として10人目の世界王者となった。
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【長谷川穂積の拳心論】
ジムの後輩の久保には、まずおめでとう言いたい。序盤から自分のペースで戦い、いいボクシングができていた。
しかし、一つ課題が残った。ダウン後の対応はよかったが、ダウン前にいいパンチをもらっているのにクリンチをしたり距離をとったりせず、打ちにいってしまった場面だ。
これは、気が強いとか闘志があるということで片付けられない。それで負けたら何も残らないということを考えなければならない。
自分の距離を理解し、それをキープして戦うのが久保の長所。しかし、距離をつぶされると自分のボクシングができなくなる。この試合では、前に出る時に突っ立ってしまって相手の右のビッグパンチをもらう場面が何度かあった。同じパターンのパンチをもらわないようにしないと、防衛は難しい。
王座奪取は合格点。だが、厳しい言い方をすれば、相手はスピードもパンチもそれほどなかった。これから王者として胸を張れるようにいい内容の防衛をしてほしい。防衛で、王者としての価値を高めていってほしい。
練習熱心でまじめな後輩。今の素直な性格のままでいてほしいと思う。しばらくはゆっくり休んで、チャンピオンライフを満喫し、また次の戦いに備えてもらいたい。(元ボクシング世界3階級制覇王者)