山中「神の左」不発で号泣陥落 ネリに4回TKO…具志堅氏に並べず
「ボクシング・WBC世界バンタム級タイトルマッチ」(15日、島津アリーナ京都)
「神の左」が負けた-。王者・山中慎介(34)=帝拳=が同級1位ルイス・ネリ(メキシコ)に4回2分29秒TKO負けを喫し、13度目の防衛に失敗。2011年11月から保持してきたタイトルを失い、具志堅用高の持つ世界王座13連続防衛の日本記録に並ぶことはできなかった。山中はプロ30戦目で初黒星。リング上で悔し涙を流した。進退については明言しなかった。
山中がボクシングを始めた京都の地で壮絶に散った。序盤から右ジャブがさえたものの「神の左」は不発に終わった。4回、ネリの左右のフック、ストレートでロープ際に追い詰められ、連打を浴び続けたところで陣営がタオルを投げ入れた。ダウンしなかったのが、王者としてのせめてもの意地だった。
世界王座の連続防衛日本記録がかかった試合でプロ初黒星。リングに飛び込んだ大和心トレーナーに抱きかかえられると、あふれる涙を抑えることができなかった。長野ハルマネジャーが「大和くんはお嫁さんみたいに世話をするのよ」と評するコンビ。トレーナーとしてやむを得ない判断だった。
ただ、山中自身はまだいけると思っていた。「負けておいて何ですが、大したことない相手と思っていた。向かい合った感覚で『いける』と思った。4回は止まってしまって打たれたけど、自分的には大丈夫だった。効いていなかったが、セコンドに心配させてしまった」と、悔しさをにじませた。涙は控室に戻っても止まらなかった。
だれもが具志堅氏の記録に並ぶことを期待した。かねて山中自身は「記録にこだわりはない。ファンの方々が楽しみにしてくれるのであれば、それでいい」と言い続けてきた。それは偽りない本心だ。
山中は言う。「記録とかではないんです。どの試合にも反省するところがある。完ぺきに、理想通りの試合ができたら、もうボクシングはいいかな、と思うかもしれませんね」と追い求める姿を語っていた。
理想とはほど遠い結末だったが、今後については「きょうの試合のことだけだった。何も考えられない」と唇をかみしめた。「タイミングは合っていたし、左も当たっていた。応援してくれたファンの皆さんの期待に応えられなかった」と、最後まで未練をにじませた。