【長谷川穂積の拳心論】久保はキャリア不足のもろさが出た
「ボクシング・WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(3日、島津アリーナ京都)
王者の久保隼(27)=真正=は挑戦者で同級2位のダニエル・ローマン(27)=米国=に9回1分21秒TKOで敗れ、初防衛に失敗した。デイリースポーツ評論家の元3階級制覇王者・長谷川穂積はキャリアを積む前に王者になったもろさが出たと敗因を指摘した。
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【長谷川穂積の拳心論】
敗因は、キャリアのなさだろう。久保は距離をとって左を当てるという自分のパターンが通用しない時の引き出しがなかった。ローマンは同じ頭の位置から右ストレート、フック、近い距離からアッパー、ボディーと見分けづらいパンチを打つ。その変則的な攻撃へ対応できなかった。
防衛戦はすべて世界トップレベルの戦い。いい流れで世界王者になった久保はピンチへの対応を勉強する時間が少なかった。そのもろさが出てしまった。
僕自身は(日本人キラーと呼ばれた)ジェス・マーカ(フィリピン)との東洋太平洋王座戦や鳥海純さんとの世界挑戦者決定戦など厳しい試合を経験してからウィラポンに挑戦した。世界挑戦のタイミングは巡り合わせだが、王者になる前に引き出しを増やすことも大切だろう。
王座戦での敗戦は、ノンタイトル戦と違って“負け感”が強い。それでも、久保がここから本当の王者を目指すなら僕は応援したい。11度目の防衛に失敗した時、うちの母は「まだまだこれから。1回負けただけですから」と周囲に言った。まだ1回負けただけ。後輩が負けからはい上がるかっこいい姿を見たい。(元世界3階級制覇王者)