【長谷川穂積の拳心論】見事な米国デビューの井上尚 さらなる舞台目指して
「ボクシング・WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ」(9日、カーソン)
モンスターが衝撃の米国デビューだ。王者・井上尚弥(24)=大橋=が同級7位の挑戦者アントニオ・ニエベス(米国)に6回終了TKO勝ちし、6度目の防衛に成功。米国での初の試合を完勝で飾った。
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【長谷川穂積の拳心論】
見事な米国デビューだった。守り重視で、逃げて逃げてのやりにくい相手からダウンを奪ってTKO勝ち。初回からストレートのようなジャブを当てて“安心モード”に持ち込んだ。
僕も7月に世界挑戦した三浦隆司選手の応援で米国のリングに上がったが、それだけでもアウェーの雰囲気を感じた。井上君も慣れない舞台に緊張したと思う。その中で立ち上がりから堂々としたパフォーマンスを披露した強心臓ぶりも素晴らしい。この勝ち方なら近いうちにまた米国に呼ばれると思います。
本人も周りもタイトルを奪ったナルバエス戦のような衝撃的なKO勝ちを期待していたかもしれないが、あれだけ逃げ回る相手には難しい。この結末も仕方ないでしょう。
このように良い面ばかりが強調される試合の中で、ぜいたくを言うなら課題も見えた。勝敗には影響を及ぼさなかったが、今回の井上君のパンチは強弱が少なかったように思う。「強→強→強」と8割以上が強いパンチ。これが「強→弱→強」など7対3ほどの割合になれば、連打も4発、5発と続きやすくなり、「強」のパンチがより生きるはずだ。
この先、階級を上げていけば、もっと強い相手と戦っていくことになる。世界中が注目するHBOやSHOWTIMEのビッグマッチのメインイベントなど可能性は広がる。この勝利に慢心することなく、日本人が誰も成し遂げていない舞台を目指してほしい。(元世界3階級制覇王者)