【長谷川穂積の拳心論】ネリ選手体重超過の影響は明白… ボクシングに対する冒とく
「ボクシング・IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(1日、両国国技館)
ダブル世界戦が行われ、IBFスーパーバンタム級は王者の岩佐亮佑(28)=セレス=が同級13位のエルネスト・サウロン(28)=フィリピン=を3-0の判定で下し、初防衛に成功した。
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【長谷川穂積の拳心論】
山中選手は僕がこう言うことを望んでいないだろう。でも、結果的に体重超過の影響があったのは明白だ。ネリ選手は明らかに前回より力強さがあり、減量苦がなかったと感じた。ウエートをつくらないネリ選手の行為は、ボクシングという競技に対する冒とくだと思っている。
1回にもらったカウンター気味の右のダメージが残ったまま山中選手はやられてしまった。スリップと判定されたが効いていた。
サウスポーの僕が“仮想ネリ”としてマスボクシング(寸止め)の相手を務めたことがあったが、その時にやろうとしていた頭を低くする防御はできていた。もしかしたら、防衛回数の早い時期に対戦していたら違う結果になっていたかもしれない。ボクサーと車のエンジンは似ていて、車のエンジンが10万キロ、20万キロと走ればそれだけ消耗する。それを3、4年休ませたからといってよくはならない。エンジンは入れ替えられるが人間はそうはいかない。だから、もっと早い時期に対戦したかった。
今回のベルトは僕は“おまけ”だと思っていた。相手の体重超過の問題があっても勝たなければ前の負けはなくならない。彼はそこに立ち戻って戦ったと思う。
僕自身が感じたことだが、選手は満足してやめることは不可能だ。ただ、納得してやめることはできる。彼がこの試合にいい状態で臨み、自分で納得しているのなら、その結論に僕は何も言えない。(元世界3階級制覇王者)