【長谷川穂積の拳心論】戦略はまっても作戦成功にならない難しさ
「ボクシング・WBO世界ミニマム級タイトルマッチ」(13日、神戸市立中央体育館)
王者の山中竜也(23)=真正=は、同級3位のビック・サルダール(27)=フィリピン=に0-3で判定負けし、2度目の防衛に失敗した。7回、挑戦者の右ストレートを被弾し、ダウンを喫した。これで日本ジム所属の世界王者は6人となった。
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【長谷川穂積の拳心論】
7回までは有利な戦いだと思っていた。1、2回は互いにテクニックを出し合って、見ていて気持ちのいい戦いだった。
序盤の接近戦ははまっていたので、僕はポイントを取れていたと思ったが、結果的にはそうではなかった。山中自身も自分が有利だという気持ちになってしまったことで、気を抜いた瞬間に相手の右ストレートをもらってしまった。接近戦という戦略は正解だったが、それがうまくいったことで結果的に隙を生んでしまい、作戦成功にはならなかった。これがボクシングの難しさだろう。
ただ、あれだけのダウンをすると、ダメージだけでなく気持ちの面でもマイナスの影響が出るが、そこからよく立て直した。まだ23歳。これからこの負けを山中がどう捉えていくかが大切だ。
この負けがあってオレは強くなったと、引退する頃にそう思える試合にしてほしい。僕にとっては(3階級制覇に最初に挑み、7回TKO負けした)キコ・マルチネス戦や(WBCフェザー級王座から4回TKO負けで陥落した)ジョニー・ゴンサレス戦がそうだった。僕の後輩が、この悔しい敗戦を生かしてくれると信じている。(元世界3階級制覇王者)