山中竜也 涙の陥落 1カ月で8キロ…減量苦限界だった 階級上げて再起へ
「ボクシング・WBO世界ミニマム級タイトルマッチ」(13日、神戸市立中央体育館)
王者の山中竜也(23)=真正=は、同級3位のビック・サルダール(27)=フィリピン=に0-3で判定負けし、2度目の防衛に失敗した。7回、挑戦者の右ストレートを被弾し、ダウンを喫した。これで日本ジム所属の世界王者は6人となった。
一発で全てが狂った。接近戦からの左ボディーに活路を見いだそうとした山中だったが7回中盤、挑戦者の放ったワンツーにガードの間を打ち抜かれ、後方にはじけ飛ぶように尻もちをついた。
「かなり効いた」と山中自身も認めた痛恨のダウンだった。10回に右まぶた、11回には左目尻を切った。流血で左目の視界を奪われながらも手を出したが、巻き返しも及ばなかった。
「皆さんの期待に応えられず申し訳なかったです」と一切の言い訳をせずに謝罪したが、敗因は明らかだった。進化を続ける肉体と減量苦は常に背中合わせだった。胸囲は王座を奪取した昨年8月から1年足らずで5センチ増した。
「パンチ力がついた」と実感する一方、王者として会食に呼ばれる機会も増え、ピーク時の体重は62キロにまで達した。周囲の喜びを自らの力に変えてきたが、気遣いのあまり勝負に徹し切れなかった優しさがあだとなった。
1カ月で8キロという未体験の減量は王者の体を確実にむしばんだ。序盤から動きが重く、7回のダウンでは両脚がつった。以前から体重が落ちない夢を見ることもあったが、「今回はさらに怖くなった」という不安が的中してしまった。
敗戦後、ジムの先輩で元世界3階級王者の長谷川穂積氏に「すみませんでした」と頭を下げたが、「謝ることじゃない」と言葉をかけられた。試合後は大事をとって神戸市内の病院で検査を受けた。今後は未定だが、階級を一つ上げ、ライトフライ級で2階級制覇を目指す可能性が高い。まだ23歳。「これで終わるつもりはないです」と話す目の光は、失われていなかった。