急性硬膜下血腫で前世界王者・山中竜也が引退会見「人生で一番濃い1年」 母に感謝と謝罪
ボクシング前WBO世界ミニマム級王者の山中竜也(23)=真正=が31日、神戸市内の所属ジムで引退会見を行い、「最初は自分のことじゃないような感じで受け止められなかったが、徐々に現実なんだなと考えた」と率直な思いを口にした。
山中は7月13日に2度目の防衛戦でビック・サルダール(フィリピン)と対戦。7回にダウンを喫するなど0-3の判定負けで王座を失った。試合後には激しい頭痛に襲われた。救急車で神戸市内の病院に搬送され、急性硬膜下血腫と診断された。
日本ボクシングコミッション(JBC)の規定では「コミッションドクターから頭蓋内出血(硬膜下血腫等)と診断された場合、当該ボクサーのライセンスは自動的に失効する」と定められており、現役引退を余儀なくされた。
23歳の若さでリングを去ることになった山中は「30歳までできると思っていたので(引退は)思ったより早いなと思ったけど、周りの方に支えられて本当に感謝しています」と頭を下げた。
中学時代に真正ジムに入門し、高校へ進学せずにプロデビューした。昨年8月に初挑戦で世界王座を奪取し、3月には初防衛も成し遂げた。戴冠からの1年間を「人生で一番濃い1年でした」と振り返った。
「最初に始めた時からずっと好きだった」というボクシング。「自分で自分のことを強いと思えるまでやりたかった。まだまだ先へ、行けるところまで行けたらよかった」と寂しそうな表情も見せた。「ありがたかったというのと、申し訳ないなという気持ち」と、最後まで周囲への気遣いを忘れなかった。
女手一つで育ててくれた母・理恵さんに家を建てることが夢だった。「ボクシングではその夢はかなえられなかったけど、また違うものを見つけてその夢を達成できれば。僕のやりたいことに協力してもらってありがとうございます。でも心配かけてすみません」と思いを語った。
今後については「まだ探している」と白紙を強調した。同門の先輩で元世界3階級王者の長谷川穂積氏からは「やれることを見つけてやってみて、それがやりたいことになればいいな」という言葉を贈られたという。グローブを吊し、第2の人生に踏み出す。