山本美憂「ファンに感謝」KIDさんにささげる弔い星 充実の笑みとともに涙…
「総合格闘技・RIZIN」(30日、さいたまスーパーアリーナ)
元レスリング世界女王の山本美憂(44)=KRAZY BEE=が、アンディ・ウィン(36)=米国=に3-0の判定で勝利した。18日に41歳で死去したプロ格闘家の弟、山本KID徳郁(本名岡部徳郁、旧姓山本)さんに白星をささげた。
がん闘病中だったKIDさんに勇気を与えるため、直訴して実現させた試合だった。総合格闘技の師でもある弟の死に見舞われても、美憂は「リングに立つことを彼が望んでいる」と出場を決めた。
16年大みそかに対戦して敗れたウィンを相手に、美憂は1回開始早々にパンチをかいくぐって得意のタックルからテークダウン。その後は上に乗り続けてパワフルな右のパンチを振り下ろすなど、優位に試合を進めた。2回、最終3回にもタックルからテークダウンし、上に乗ってわき腹にヒジを打ち込むなど闘志あふれる攻撃を展開。終了間際には腕ひしぎ十字固めを決めたが、同時に時間切れのゴングが鳴った。
勝ち名乗りを受けた美憂は充実の笑みとともに号泣。リング上で「みなさんの応援のおかげでリングに上がることができました。みなさまに感謝したい」と話し、悲しみを乗り越えてつかんだ喜びをかみしめた。
試合後は「勝てて良かったとひと安心」と話しながらも、「スタンドの打撃がうまく出せなかったのが悔しい。グラウンドもセコンドの言うとおりに動けなかったのが悔しい」と反省。試合中にはKIDさんが得意とした左構えからの右フックも見せたが、「当たってなかったですね。あそこはKIDだったら決めていた。笑っていると思う」と笑顔で振り返った。
美憂の勝利を期待する会場の雰囲気には「みんながKIDを思ってくれている、愛していてくれてる気持ちがうれしかった」と感謝した。「1日1日、自分が強くなることを考えるだけ」という今後。再びリングに立つことを願いながら志半ばで天国へ旅立った弟の思いを背負い、精進を続ける。