坂本真宏、日本初!国公立院生で世界挑戦 異色の“理系ボクサー”大みそか殴り込み
「ボクシング・IBF世界フライ級タイトルマッチ」(31日、マカオ)
大阪市立大大学院生でIBF世界フライ級15位の坂本真宏(27)=六島=が5日、大阪市内で会見し、31日にマカオで同級王者モルティ・ムザラネ(36)=南アフリカ=に挑戦すると発表した。坂本は世界初挑戦で、国公立大大学院生の世界挑戦も日本初。「感謝を力に変えて世界チャンピオンを殴り倒したい」と力強く王座奪取を誓った。同日は井岡一翔(SANKYO)が日本勢初の世界4階級制覇を狙うWBO世界スーパーフライ級王座決定戦、京口紘人(ワタナベ)が2階級制覇に挑戦するWBA世界ライトフライ級タイトルマッチのトリプル世界戦となる。
異色の経歴を持つボクサーが世界の舞台にたどり着いた。在学する大阪市立大で会見に臨んだ坂本は「応援して下さる皆さんへの今までの感謝を力に変えて、世界チャンピオンを殴り倒したい」と拳を握り締めた。
同大工学部を卒業後に大学院へ進学。工学部工学研究科で機械物理系を専攻する。修士論文のテーマは「陽極酸化チタン中空シートの水熱法による窒素ドープ」という“理系ボクサー”。「経験してこなかった非日常性」に引かれ、大学からボクシングを始めた。国公立大大学院生が世界王者となれば日本初。「こういうボクサーもいると思ってもらえれば」と控えめに語る。
夢の実現へ所属ジムの枝川会長も金策に奔走した。同大の荒川学長を通じてOB関係者に頭を下げて回った。サントリー創業者の鳥井信治郎氏が卒業生という縁もあり、サントリーHDなど約10社の広告協賛を得たが「数千万円」という目標額には届いておらず、同会長は「今のところファイトマネーは0円」と冗談めかし、さらなる支援を募った。
勝たなければいけない理由は他にもある。坂本の原点でもあるボクシング部が部員激減で廃部の危機に追い込まれている。「ボクシング部があって今の自分がある。大切な場所」と戴冠効果で部員増に一役買うつもりだ。
背負うものは大きい。そして王者は36歳とはいえ、10年には現WBO世界バンタム級王者テテをKOで葬ったこともある猛者。「正直、怖さもあったがチャンスは人生で1回あるかないか。世界チャンピオンになりたい」。明晰(めいせき)な頭脳でも説明のつかない衝動に駆られ、坂本が世界のリングに上がる。