井岡一翔 日本人初の4階級制覇!引退、離婚を乗り越えて涙のTKO
「ボクシング・WBO世界スーパーフライ級王座決定戦」(19日、幕張メッセ)
WBO世界スーパーフライ級王座決定戦で同級2位の井岡一翔(30)=Reason大貴=が同級1位のアストン・パリクテ(28)=フィリピン=に10回1分46秒TKO勝ちし、日本男子初の4階級制覇を達成した。今回の勝利が世界戦15勝目。具志堅用高を抜いて日本選手単独最多ともなった。17年12月31日に一度現役を引退し、18年9月に復帰。さまざまな苦難を乗り越えた男が、日本ボクシング史に新たな歴史を刻み込んだ。
地鳴りのような大歓声が沸き起こる中、井岡は涙をあふれさせながら喜びの雄たけびを上げた。日本男子初の快挙となる4階級制覇。2度目の挑戦で達成したリング上で「感謝の言葉しかないです。僕が復帰してから僕以上に期待して下さった方々にこの勝利をささげたいです」と声を張り上げた。
ワンチャンスをものにした。体格で上回り、70%超のKO率を誇るパリクテの強振を見切って有効打を許さなない一方、「想像以上やりにくかった」。自身も攻めあぐんだが、4回から上下に打ち分けるパンチがヒットし始める。
そして迎えた10回。カウンターの右ストレートでぐらつかせると、「効いたのが分かったので、ここしかないと思ってまとめた」と連打を浴びせ、相手が棒立ちになったところでレフェリーがストップ。2年2カ月ぶりに帰ってきた日本のリングで見事に快挙を成し遂げた。
栄光の道を歩んできた井岡だが、17年11月にWBA世界フライ級王座返上後は激動の日々だった。同年大みそかに現役を引退。所属ジム会長の父・一法氏とたもとを分かち、拠点を米国に移して18年9月に復帰する。11月には歌手の谷村奈南と離婚。大みそかには4階級制覇に初挑戦したが、ドニー・ニエテス(フィリピン)に阻まれた。
「人生最後の戦いになるかもしれない」と覚悟を決めて臨んだ、異例と言える2戦連続の王座決定戦。「引退して復帰して、より大きなことを言っているので、相当なプレッシャーがあった。みんなに分かって欲しいというか、ずっと追い詰められている気持ちだった」とここまでの歩みを振り返った。今後は「このベルトをまた海外へ行くチケットとして、他団体のチャンピオンと戦いたい」と再度の海外進出と王座統一戦を希望。「しいて言えば(WBC王者のファン・フランシスコ・)エストラーダ」と狙いを定めた。
同居している元モデルの30代女性と再婚する予定で、数カ月後には第1子が誕生する。「気持ちとしてはチャンピオンとして迎えたかった」と笑う。苦難を乗り越えた男が父として、再び栄光の道を歩み始める。