村田諒太「98%」引退から魂の王座返り咲き! プライド取り戻した!2回TKO
「ボクシング・WBA世界ミドル級タイトルマッチ」(12日、エディオンアリーナ大阪)
挑戦者の村田諒太(33)=帝拳=は王者ロブ・ブラント(28)=米国=との再戦を2回2分34秒、TKOで制して9カ月ぶりに王座に返り咲いた。日本ジム所属選手で、王座陥落からダイレクトリマッチで再奪取は輪島功一、徳山昌守に続く史上3人目の快挙。この一戦に懸けていた男はリング上で目を潤ませ、勝利に酔った。
奇跡の奪回劇で大阪に感動の嵐を巻き起こした。2回、レフェリーが試合をストップすると、会場を揺るがすような大歓声がとどろき、再び世界王座のベルトを腰に巻いた村田は涙をあふれさせた。
前戦で1200発以上のパンチを放った王者ブラントは開始からそれを上回るような攻撃を仕掛け、「面食らった」という村田。だが、ジムの本田明彦会長の「前で殺せ」の声でひるまず前進。「この試合が最後かもしれないし、後悔したくない気持ちもあった」と被弾を恐れず、打ち合いに持ち込んだ。そして2回。右フックでぐらつかせて、連打でダウンを奪い、棒立ちとなった王者に休まず1分以上パンチの雨を浴びせて勝負を決めた。
リング上では「練習した通りのことができたんでよかったです」と満足顔。地元でお笑いの本場でもある関西で「2ラウンドでバテて、3ラウンドでぐずぐずになるとこ見たかったでしょ」と笑いを誘った。
過去に日本ジム所属選手がダイレクトリマッチで王座を奪回したのは、12回中3回。再起戦でチャンスが舞い込んだが、データ的には厳しい戦いだった。前戦は手数と俊敏な動きにほんろうされ、「屈辱的」と認めるほどの完敗。その後は「98%ぐらい」引退を考えた。だが、「あの試合が自分の集大成でいいのかと考えた。もう一度世界の舞台に立てるボクサーになりたい」と、再び闘魂に火をつけた。
同じ戦いをしては勝てない。「前に出てガードの上を打たせて、その後打つ。それが間違っていた」と前戦の戦法を反省。下半身を安定させ、自分から仕掛けられる体勢を保つことを意識した。
相手の変化に対応することも意識。スパーリングパートナーを新たに3人招き、手の内を知らない3人連続で拳を交えることもした。さらに田中繊大トレーナーに加えて、世界3階級制覇王者ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)の弟カルロス・リナレス氏を起用。ミット打ちで大柄ながら俊敏な動きと明るいノリで村田を追い込んだ。狙い通りの戦いで結果を出した村田は「チーム帝拳は最高です」と感謝した。
「帝拳ジムに世界チャンピオンがずっといなきゃいけない。バトンを渡せる選手が出て来るまで頑張りたい」。名門ジムで現在唯一の世界王座を守り抜くことを誓ったが、今後については関西弁で「あんまり言いたないですわ。取ったばっかりで」と話すにとどめた。みんなでつかみ取った王座。栄光の道は再び切り開かれた。