尚弥V…5階級制覇ドネアに打ち勝った! 11回にダウン奪い、3-0判定勝ち
「ボクシング・WBSS決勝、WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチ」(7日、さいたまスーパーアリーナ)
「世界最強」を証明した。ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝が行われ、WBA、IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(26)=大橋=がWBAスーパー王者のノニト・ドネア(36)=フィリピン=を3-0の判定で下し、優勝を果たした。2回に右目上をカットし流血しながら果敢に打ち合い、WBAは3度目の防衛に成功し、スーパー王座を獲得。IBFは初防衛を果たした。試合後には米大手プロモーター「トップランク社」との複数年契約を発表。さらなる高みを目指す。
“モンスター”史上最大の苦戦を制して、世界最高の頂にたどり着いた。5階級制覇のレジェンド、ドネアの厚い壁を突破した尚弥。リング上で「ドネア選手、めちゃめちゃ強かったです。初めてというカットの経験。2ラウンド目は正直、ドネアが2人に見えていました」と右目のまぶたがぱっくり裂けた顔で振り返った。
両者の左フックはともに一撃必殺。ドネアが得意として衝撃的なKOを量産し、尚弥はそれを取り入れて自分のものとした。打てば火花が散るようなスリリングな展開。尚弥は2回にはその左フックでぐらつかせたが、自身も左フックを浴び、初のカットに追い込まれた。
視界がぼやける中、9回には右ストレートでぐらついた。中盤以降はドネアのパンチを何度も被弾し、所属ジムの大橋秀行会長が「パンチが効いていた。知り合って初めて見た」という劣勢に立つ。だが、11回。尚弥が左ボディーをわき腹に突き刺すと、ドネアは背を向け、手をついてダウン。尚弥は2万人を超える観衆の大声援を受けながら最終ラウンドまで攻め続けた。
1人は1点差という接戦で果たしたドネア超え。高校時代からあこがれた存在に「世代交代」を宣言して挑んだが、「負けられないというドネアの気持ちの強さを感じました。まだまだこんな内容じゃ世代交代とは言えないです」とレジェンドの偉大さを痛感した。
この試合の前には弟の拓真が兄弟初の黒星を喫した。「優勝することができて、すごく充実した1年だと改めて思うことができます」と喜びをにじませ、「ボクは拓真の敵を取りたいと正直思います。ウバーリと統一戦をやりたいです」と闘志を燃やした。
尚弥は賞金とファイトマネーを合わせた推定で1回戦60万ドル、準決勝80万ドル、決勝戦100万ドルの合計240万ドル(約2億6000万円)を手にする。そして試合後には大きなプレゼントが届いた。米大手プロモーター「トップランク社」のトッド・デュボフ社長が訪れ、尚弥と複数年契約で合意したと発表。来年は米国で2戦、日本では年末に試合を行う予定を明かした。
本格的に始まる海外進出。尚弥は「この契約がどういうことか覚悟しながら、厳しい戦いが待っていると思うので、一つ一つクリアしていくために少し休んでから精進していきたい」と目を輝かせた。