辰吉が明かす…次男・寿以輝への思い 「本人は“辰吉2世”と思っていないし、思ったら終わり」 

 新緑の下で、次男・寿以輝(左)とツーショットで写真に納まる辰吉丈一郎(撮影・山口登)
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 5月15日に50歳を迎えたボクシングの元WBC世界バンタム級王者、辰吉丈一郎の独占インタビュー。最終回はプロボクサーの道を選んだ、次男の寿以輝(23)=大阪帝拳=への思いを語った。また、自身と同じく時代の寵児となったWBAスーパー・IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(27)=大橋=の才能についても言及した。

 ◇  ◇

 50歳まで競技人生を突きつめてきた辰吉。その間に2人の息子は成長し、次男の寿以輝は5年前にプロデビューした。13戦13勝(9KO)。日本スーパーバンタム級8位として日本王座を見据える。

 「本人は自分でコツコツやってきたからここへ来てると思いこんでる。そうせざるを得ないもんな。俺から見たら、本当はめちゃめちゃ遠回りやねんで、と言いたいけど。でも、アマ経験なくプロになってあそこまで行ったら大出世やと思う」

 “辰吉2世”の看板を背負う息子は、早熟だった父とは違い、堅実に一歩ずつ階段を上っている。

 「本人はそう(2世だと)思ってないし、思ったら終わり。名前で注目されてるし、今は動画で相手に弱点もすぐわかる。でも、その弱点を隠すことなくプラスに変えて押し切ってる。それは本人の努力やと思うよ。例えば頭の振りが悪い、足を使うのがヘタなら(別の技術で)カバーしたらいい。あの子には1試合1試合が勉強になってる」

 寿以輝はこれまで左手とろっ骨を痛め、2度の試合中止を経験した。今は、自身の父粂二さんが「世界王者になったら引退したらいい」と言っていた気持ちがよくわかる。

 「不安なのは、どこか自分に似とること。ボクサーやから拳を痛めることはあるけど、ここでならんでもってタイミングがある。痛めると、例えばフックが得意でそれで倒したいと思っても、サンドバッグで好きな打ち方で打てない。練習でできないフックは試合でも絶対できん。試合ができても本人は納得してないってこと」

 ただ、そんな共感を息子に伝えることは、ほとんどない。

 「俺のことはほっといて、自分のペースでやるから好きにやらせてと思ってる。俺がそうやったように、本人には本人の美学がある。親の描いているものとは違うよ」

 ボクシング界にも新時代が到来している。主役を張るのは、同じ“黄金のバンタム”の井上尚弥だ。

 「すごいやん!(海外進出という)うちらの時代にはないことをやってのけた。日本人として誇りやね。パンチもあるし、当て勘もええし、距離感もいいし、センスもいい。もともとシュッとしてるけど、あれだけ強いから何でも乗り越えてしまうんやろうな」

 それでも自分は現役。あくまで目線は上からではなく水平だ。辰吉は最後に言った。

 「尚弥君もすごいけど、尚弥君は辰吉じゃない。あの子は強いし、何も言うことはないんよ。でも、俺は辰吉がええもん。辰吉みたいな生き方ってなかなかない。おもしろいよ、こんな人生」

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