元チャンプの妹 山中菫がプロテスト合格 志半ばで引退した兄の夢つなぐ
ボクシングの元WBOミニマム級王者、山中竜也さん(25)の妹、菫(すみれ、18)=真正=が25日、神戸市中央体育館で行われたプロテストに合格。兄の背中を追って小学3年から同ジムでボクシングを始め、今春に相生学院高を卒業。ようやく夢のスタートラインに立ち「お兄ちゃんを超える。世界王者になるつもりです」と兄そっくりのベビーフェースで宣言した。
2年前、2度目の防衛戦で判定負けした竜也さんはそのまま病院に運ばれ、急性硬膜下血腫で引退を余儀なくされた。それまでボクシング一筋に打ち込んできた菫だったが、危険を伴う競技を目の当たりにしたショックは大きく「その時はやめようかと思った」と振り返る。しかし、「練習しているうちにまたやりたいと思った」と思いは再燃。引退した兄とマスボクシングで手合わせし、会えない時期はスマホの動画で指導を仰ぎながら、この日を目指してきた。
大阪・北新地でおにぎり専門店「おにぎり竜」を営む竜也さんはテスト会場には来られなかったが、「パンチをもらわず足を使って頭を振って」とアドバイスを送ってくれた。言葉通り、サウスポーの菫は手数を出してアグレッシブに2ラウンドを戦った。
この日のプロテストは、タイトル戦を含む興行前に行われた。観客を入れる予定がコロナ禍で5日前に無観客が決定し、「緊張したから観客なしでよかった」と菫は苦笑い。6人きょうだいの5番目(次女)で、憧れのボクサーは最年長で一家の大黒柱の「お兄ちゃん」。巧みな技術と高い攻撃力で将来を嘱望された兄は、志半ばでグローブをつるした。夢のバトンは、妹がしっかりつないでいく。