井上尚弥、聖地ベガスで圧巻KOデビュー 具志堅超え!日本人最多の世界戦15連勝
「ボクシング・WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチ」(10月31日、ラスベガス)
統一王者の井上尚弥(27)=大橋=が挑戦者ジェーソン・モロニー(オーストラリア)を7回KOで下し、WBAは4度目、IBFは2度目の防衛に成功した。6回に左フックでダウンを奪い、7回にカウンターの右ストレートで仕留めた。初めてボクシングの聖地ラスベガスに乗り込んでの米国本格デビュー戦は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により無観客で行われたが、きっちり完勝で飾ってみせた。これで世界戦15連勝として、具志堅用高を抜き日本単独最多となった。
鮮やかな“モンスター伝説”第2章の幕開けだった。ハロウィーンの聖地で圧巻のKO劇。本場の期待に応える完勝に「ここラスベガスでやる上ではよかった」と満足げにうなずいた。
初の聖地のリングに「少し硬くなった」という。鋭いジャブ、ボディーなどで攻め込むも、序盤はガードを固めてコツコツとパンチを繰り出すモロニーを崩しきれなかった。
だが中盤、ついにモンスターの強打がさく裂する。6回に左フックを合わせてダウンを奪うと、続く7回、ワンツーにドンピシャで合わせたカウンターの右ストレートを顔面にたたき込む。「フィニッシュをどうしようか、やりながら考えていた」と、KO負けがなかった挑戦者を力と技で沈めてみせた。
「足も上体も動かすので的を絞らせてくれないという印象を1~4回は受けたので、カウンター狙いでいこうかなと作戦を切り替えた」と対応力を発揮。試合中に脚がつったようなしぐさを見せたことには「少し違和感があった。3、4回ぐらい。次の課題として減量方法も考えていこうと思う」と話した。
コロナ禍にほんろうされた1年。尚弥は4月にWBO同級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)と王座統一戦を行う予定だったが、延期となり、相手もモロニーに変更された。先が見えない不安の中でモチベーションを保てず引退するボクサーも相次いだ中で、所属ジムの大橋秀行会長は「もう一つのモンスターを発見した」という。1月から集中力を切らすことなく、休みをとることもなく、試合へ向けた練習を続けてきた。「普通なら泣き言の一つや二つは言うものだけど、全くなかった。尚弥の強さはこういうところにもあった」と感心しきりだった。
引退を35歳に設定し、「ここがボクの第2章」と位置づけた一戦を見事に突破した尚弥は、今後について「WBC(ノルディーヌ・ウバーリ=フランス)とWBO(カシメロ)にチャンピオンがいるので、どちらかとやりたいし、IBF指名試合も選択の中に入る」と史上6人目の4団体統一にも意欲的。第二のマニー・パッキャオ(フィリピン出身の元世界6階級制覇王者)との期待もあるが、「まだまだ。これからそういう位置に近づけるようになりたい」と気持ちを引き締めた。