井岡一翔は処分なし 大麻はB検体で不検出、禁止薬物は検体腐敗の影響か 手続にも不備
ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔が昨年12月31日に行われた田中恒成との試合時に受けたドーピング検査について、日本ボクシングコミッション(JBC)は19日、倫理委員会が井岡がJBCの諸規則に違反したり、刑罰法規に抵触する行為を行ったとは認定できないと結論づけたことを発表した。JBCはこの倫理委の答申を受け、井岡側には処分を行わないことを発表した。
19日にJBCが結論についての会見を開いた。当該試合で選手から採取された尿は「A検体」と「B検体」に分割された。大麻が検出されたというA検体の検査は偽陽性の疑いが強いと結論づけたことが明かされた。まず、A検体で行われた検査は簡易検査のため確定的な結論を出せないこと、またB検体で大麻に対象を絞った検査を行ったところ大麻は不検出だったことが理由とされた。
なぜA検体で偽陽性となったかについては、A・Bの両検体が12月31日の採取当日は午後4時から午後10時まで常温で置かれていたことや、同日から1月5日まで両検体が冷凍保存されなかったこと(冷蔵庫での保管だった)、さらに1月5日にA検体の検査が行われた病院に持ち込まれるまで常温で輸送されたことによる腐敗の可能性が強く疑われると指摘された。
倫理委の答申書には、検査を行った材料化学技術振興財団の検査担当者の発言も掲載されている。「検査実施までの間に腐敗が進んでいたと考えられる。検体が腐敗した場合、細菌の代謝により、フェネチルアミン、チラミン等が産出・増加することがあり、B検体に対する薬物スクリーニング検査の結果については、検体の腐敗による影響を否定することはできない」とする旨、説明があったとしている。
このような経緯から、尿を採取した時点から上記の3成分が検体内に存在したことを認定することは困難とした。
さらに、警察に通報したことを契機に、押収されたB検体が全量消費されてしまい、井岡側からの要請による再検査も行えないという、手続き上の瑕疵(不備)があることも倫理委から指摘された。
倫理委はJBCとの間に利害関係を有しない外部有識者で構成されていることも発表されている。