【長谷川穂積の拳心論】距離つぶす相手、得意なパンチ打てなかった井岡
「ボクシング・WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ」(1日、大田区総合体育館)
井岡一翔が挑戦者で同級2位のフランシスコ・ロドリゲスを3-0の判定で破り、3度目の防衛に成功した。昨年大みそかの前戦、田中恒成(畑中)とのV2戦でのドーピング検査で日本ボクシングコミッション(JBC)の不手際によりかけられた違反の疑いが晴れてからの初戦。前半は押され気味だったが、中盤からペースをつかみ、最後3回は打ち合う場面が目立ったが、3者とも116-112の4点差で押し切った。緊急事態宣言の延長を受けて日本国内での世界戦では初の無観客試合となった。
◇ ◇
お互いがいいパンチを当てるジャッジ泣かせの展開だった。ロドリゲス選手は典型的なメキシカンスタイルの選手。大きく体を振ってリズムを取り、パンチの種類も多彩で非常に好戦的だったので、井岡選手にしては珍しくノーモーションの右やそこからの逆のワンツーなど細かいパンチをもらっていた。また、接近戦で徹底したクリンチで距離をつぶしてくるので、得意なパンチが打てなかった。
好機となったのは7回、相手が前に出るだけでなく足を使い距離を変え始めたこと。これで自分にとって戦いやすい距離になり、軽いジャブが当たり始めた。9回以降は双方の打ち合いが続いたが、勝負の11回に自分の戦い方に持ち込めたことが大きかった。
ロドリゲス選手は、タイミング、カウンター、空間支配率の全てが優れた井岡選手を研究し、うまく攻略してきた。井岡選手はコロナ禍の中、無観客で気持ちをつくるのも難しい試合だったと思う。自分の得意なパターンに持っていけない時の戦い方もわかったと思うので、次戦につなげてほしい。