尾川堅一が涙の世界奪取!ドーピング違反から4年“幻の王者”が“真の王者”

 「ボクシング・IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦」(27日、ニューヨーク)

 同級3位の尾川堅一(33)=帝拳=が同級2位アジンガ・フジレ(25)=南アフリカ=を3-0の判定で破り、新王者となった。

 カウンターを狙うサウスポーのフジレに対し、初回から積極的にプレッシャーをかけていった尾川。ロープ際に追い詰めては連打を浴びせることを繰り返すも、フジレの柔軟な身のこなしと独特のガードをなかなか崩せなかった。

 しかし、5回。尾川が身を沈めながら繰り出した右フックがフジレのアゴをとらえ、ダウンを奪う。その後もカウンターを待ちながら下がるフジレを尾川が追う展開が続いたが、9回にはまたも尾川の右ストレートがヒットし、フジレの右目上から出血させた。

 終盤にはややフジレも積極性を見せたが、尾川は12回にも右ストレートで2度のダウンを奪って試合終了。3-0の判定勝ちが告げられると笑顔を見せた。

 しかし、3児の父はリング上のインタビューでは「4年前の試合で、子どもたちにベルトをね…、すみません…」と、こらえていた涙がボロボロ。それでも気を取り直し、戦術を問われると、「とにかくプレッシャーをかけて相手を下がらせるというプラン通り行けた。ちょっと手数が少なかったのが反省点ですけど、練習していた右ストレート、クラッシュライト(尾川の異名)ですね」と明かした。

 5回にダウンを奪ったパンチについては「右フックを引っかけるというのは相手がやることだと分かっていたので、それをくぐって右フック」と説明。今後を問われると「言われた試合をこなして、どんどんアメリカだったり全世界で試合をして、日本人は強いと言うのをアピールしたいし、尾川堅一をアピールしたい」と目を輝かせ、3人の子どもへメッセージを送った。

 尾川は15年に死去した父の雅一さん(享年53)が日本拳法の道場を営んでいたことで幼少期から日本拳法を学び、明大時代には主将として団体全国優勝に導くなどの実績を残してボクシング入り。11年に全日本新人王、15年に日本王座獲得した。

 17年12月にはニューヨークで行われたIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦でテビン・ファーマー(米国)に勝利したが、後日にドーピング検査で陽性が判明。意図的な禁止薬物の摂取を否定し、「薬の知識がなかったのが一番の反省点」というものだったが、試合も王座獲得も無効となり、JBCからは1年間の資格停止処分を受けた。

 天国から地獄にたたき落とされたが、「許してもらえるなら、もう一度リングに立ちたい」と現役を続行。処分が明けた19年2月の復帰戦の際には「悪く言う人もいれば信じてくれる人もいる。その信じてくれる人のために世界チャンピオンになるのが自分の中での強い気持ち。それで恩返ししたい」と誓い、再びはい上がった世界の舞台でそれを果たした。“幻のチャンピオン”が“真のチャンピオン”になった。

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