「ボクシング・６回戦」（６日、神戸市立中央体育館）

　元ＷＢＯ世界ミニマム級王者の山中竜也（２６）＝真正＝が、３年８カ月ぶりの復帰戦に臨んだ。６回戦で須藤大介（２７）＝三迫＝と対戦し、５回１分５２秒ＴＫＯ勝ちした。試合開始後には重圧も感じたというが、試合前に受けた同門の先輩で３階級制覇の元世界王者、長谷川穂積氏（４１）からの金言を胸に、戦い抜いた。

　山中は１回に近距離からの右カウンターでダウンを奪い、２回以降も終始相手を圧倒。５回にラッシュを浴びせてレフェリーが試合を止めた。山中は戦績を２０戦１７勝（６ＫＯ）３敗とした。

　「プレシャーはあったけど楽しかった」と山中。試合前までそれほど感じていなかった重圧は、ゴングが鳴った瞬間に襲ってきたという。しかし、長谷川氏から「スパーではよくても試合は全然違うかもしれないから、ハードルを上げすぎるな」と助言を受けていたため、「あ、これかと思った」と平静を取り戻した。

　山中は２０１８年７月、世界王座の２度目の防衛戦で敗れた際に、硬膜下血腫が判明。日本ボクシングコミッション（ＪＢＣ）の規定で、２３歳で現役を引退した。しかし、昨年１２月にＪＢＣが、再発の可能性が健常者と変わらない場合、ライセンス再発行を認めると規定を変更。現役復帰の道が開けた。

　大けがを負った経験からの復帰にも、恐怖心は「全くなかった」と山中。「ボクシングのリングに立てば、そういうこともある」と言い切り、恐怖心は「負ける恐怖」だけだったと勝負師の顔も取り戻した。

　リングサイドでは、この試合後に結婚する予定の婚約者、足立綾子さん（３３）が見守った。今後はライトフライ級で２階級制覇を目指し、妹でプロボクサーの菫（すみれ、２０）とのきょうだい王者へ期待もかかる。再出発を切った元王者は、「妹も僕も、もっと頑張れよという感じで、世界王者を目指したい」と力強く話していた。