寺地拳四朗 涙の雪辱3回KO 史上4人目リターンマッチで王座奪還「もう幸せの一言」
「ボクシング・WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ」(19日、京都市体育館)
前王者の寺地拳四朗が3回1分11秒KOで王者の矢吹正道に圧勝し、因縁のダイレクトリマッチを制した。積極的に前に出る新スタイルを披露し、3回に右ストレートで倒した。国内ジム所属選手が、リターンマッチで王座を奪還するのは史上4人目(5度目)。今後は他団体との統一戦や2階級制覇を目指す。矢吹は昨年9月に10回TKOで獲得した王座の初防衛に失敗した。
涙越しに新しい景色が広がった。「ああ、うれしい。ああ、良かった」。圧倒的な強さで矢吹にリベンジ。痛烈な右ストレート一撃で決着をつけた瞬間、拳四朗の目から涙があふれ出た。
失った自信を取り戻す雪辱戦だった。昨年9月の第1戦で10回TKO負け。「一度でも負けたら辞めるつもりだった」。具志堅用高氏の13連続防衛更新の夢は断たれ、本気で引退を視野に入れた。すし職人養成学校に入ることや焼き肉店で働くことも考えた。
だが立ち返って考えた。誰にも負けないと思っていたボクシングでの自信を失い、その状態で次の仕事をしてもうまくいくはずはない。覚悟を持って再起を決めた。
1月6日から再戦への準備を本格化。コンビを組む加藤健太トレーナーからはスタイルチェンジを告げられた。8度防衛してきた距離を支配するボクシングを捨てる。ジャッジに左右されない、KO狙いでいく。
2カ月かけて完成させた新スタイルで、雪辱劇を完結させた。終始相手に重圧をかけ続け、3回1分11秒のKO勝利。「もう幸せの一言。世界戦を初めて勝った時よりうれしい。お帰りって感じです」とベルトを抱きかかえた。
前回の敗戦後、元世界3階級王者・長谷川穂積氏(デイリースポーツ評論家)から「勝ったら違う景色が見られる」と伝えられた。「長谷川さん、どこですか?ありがとうございます。これが新しい景色ですね」。リング上から解説席の長谷川氏を探し、感謝した。
今後は「強い相手としか戦わない」と他団体王者との統一戦や2階級制覇を掲げる。「本当に辞めなくて良かった」。自信とともに拳四朗が新たな一歩を踏み出した。
◆寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年1月6日、京都府城陽市出身。父で元東洋太平洋ライトヘビー級、日本ミドル級王者の寺地永氏が会長のBMBスポーツジム所属。中学3年でボクシングを始める。奈良朱雀高から関大に進学し、13年に国体優勝。14年8月に拳四朗のリングネームでプロデビュー。17年5月にWBC世界ライトフライ級王座獲得。19年12月から本名で活動する。21年9月に9度目の防衛戦で矢吹正道に10回TKOで敗れ王座陥落。身長164センチ。右ボクサー。