長谷川穂積氏 ピンチを乗り越えた差があったゴロフキン 村田の情熱と覚悟が力を生んだ

 「ボクシング・WBA・IBF世界ミドル級王座統一戦」(9日、さいたまスーパーアリーナ)

 ミドル級王座統一戦で、IBF世界同級王者のゲンナジー・ゴロフキン(40)=カザフスタン=が、2012年ロンドン五輪金メダルでWBA世界同級スーパー王者の村田諒太(36)=帝拳=に9回2分11秒、TKO勝ちした。ゴロフキンは2団体の王座を統一し、IBFは2度目の防衛。元世界3階級制覇王者の長谷川穂積氏が戦いを分析した。

  ◇  ◇

 戦いの後の2人は、何十年来の友達のようだった。ボクシングは勝敗がつく。ただ、この2人を見ていると、そんなことはどうでもいいと思えた。

 村田選手はボディー攻撃で初回からプレスをかけた。相手は左ボディーは警戒していたと思うが、新しい武器である右ボディーストレートをここまでうまく当ててくるとは思わなかったはずだ。また、右アッパー、ウイービングでの防御なども新たに身につけていた。試合の延期で2年以上の時間ができたからだろう。

 足も使えるゴロフキン選手は、わざと下がっているのではなく下がらされている状況になった。しかし、5回以降は卓越したコンビネーションで攻勢に。右フックから右アッパー、ボディーというような多彩な流れは、体が柔らかいからできることで重量級の日本人にはなかなかできない。

 後半は村田選手のボディー、特に右ストレートのボディーが少なくなったことが、勝負の分かれ目になった。ゴロフキン選手には、過去最高の強敵であったと思う。ただ、キャリアの差があった。キャリアの差とはピンチを乗り越えた差。何度も何度も強敵と戦ってきたことで、劣勢でもあきらめず自分の展開へ持ち込む力はゴロフキン選手が上だった。パンチの種類、コンビネーション、防御力、空気感といった総合力でも上回った。

 村田選手は決して器用な選手ではない。ボクシングへの情熱、この試合への覚悟が力を生んだ。自ら実績を積んで切り開いた試合。あのゴロフキン選手を相手に日本人が、日本で世界戦を戦った。夢のような時間だった。(元世界3階級制覇王者)

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