ゴロフキン 貫禄TKO 序盤苦しむも9回猛攻「日本で一緒に戦えたことを誇りに思う」
「ボクシング・WBA・IBF世界ミドル級王座統一戦」(9日、さいたまスーパーアリーナ)
ミドル級王座統一戦で、IBF世界同級王者のゲンナジー・ゴロフキン(40)=カザフスタン=が、2012年ロンドン五輪金メダルでWBA世界同級スーパー王者の村田諒太(36)=帝拳=に9回2分11秒、TKO勝ちした。ゴロフキンは2団体の王座を統一し、IBFは2度目の防衛。
これが伝説の王者「GGG」の強さだ。序盤、村田のボディー攻めに苦しんだが、多彩なパンチで反撃に出る。最後は9回に死角からの右フックで日本の希望を沈めた。
「村田選手は五輪王者でスーパー王者にふさわしい戦いを見せた。日本で一緒に戦えたことを誇りに思う」。人格者で知られるゴロフキンは敗者とリング上で3度抱き合った。
そして入場時にまとったカザフスタンの民族衣装チャパンを村田に着せた。「チャパンは最も尊敬している人に贈るもの。村田選手に敬意を表した」。激闘の結末は美しかった。プロモーターのトム・ロフラー氏によると、ゴロフキンがチャパンを贈るのは村田が初めてだという。
ロシア人の父と韓国系の母との間に、ソ連時代のカザフスタン・カラガンダに生まれた。トレーナーとして今回も来日している双子のマキシムの他に兄2人がいた。その兄にジムに連れられ、8歳でボクシングと出会う。
時はソ連崩壊前夜。政情不安の中、家計を支えるため兄2人はソ連軍に入隊し、戦場で命を落とす。遺体すら見つからないまま、兄との別れを告げた。
強くなければ生きていけない-。ゴロフキンの闘いの原点がそこにある。亡き兄が導いてくれたボクシングで、未来を切り開いてきた。五輪銀、ドイツでのプロ転向、米国進出。この試合のファイトマネーは15億円を超えるといわれる。
次は“宿敵”カネロ・アルバレス(メキシコ)との第3戦が期待される。「すべての可能性はある」。カザフスタンの英雄は新たな闘いに向かう。
◆ゲンナジー・ゴロフキン 1982年4月8日、カザフスタン・カラガンダ出身。2003年世界選手権バンコク大会ミドル級金メダル、04年アテネ五輪ミドル級銀メダル。06年5月にプロデビューし、10年8月にWBA同級暫定王座を獲得。後に正規王者、スーパー王者に昇格し、世界記録タイの17連続防衛を含む19度の防衛に成功した。16年までにWBC、IBF王座も統一。18年9月にアルバレス(メキシコ)に0-2判定でプロ初黒星。19年10月にIBF王座に返り咲いた。愛称は「GGG」。179センチ。右ボクサーファイター。