武藤敬司が引退「来年春に」 天才レスラー断腸の決断「人工股関節ではプロレスはできない」
「プロレス・サイバーファイトフェスティバル」(12日、さいたまスーパーアリーナ)
プロレスリング・ノアの武藤敬司(59)が12日、現役引退することを宣言した。サイバーファイト傘下4団体(ノア、DDT、東京女子、ガンバレ☆プロレス)の合同興行に来場し、「ゴールすることに決めました」と衝撃の表明。股関節の故障が完治しないことが理由で、契約が切れる来年2月と思われる引退までに数試合行う考えを示した。グレート・ムタ、闘魂三銃士、nWoなど時代を築いた天才レスラーが38年の闘いに幕を引く。
日米で大成功を収めた“天才”が約38年のレスラー人生にピリオドを打つ。「近々、報告することがあります」と予告していた59歳の武藤。この日、リングに立つと「かつて、プロレスとはゴールのないマラソンと言った自分ですが、ゴールすることに決めました。来年の春に引退します。あと数試合はするつもりです」と明言した。
武藤は長年両膝の故障に悩まされ、18年3月には人工関節手術を受けたが、その影響で左股関節唇損傷を発症。1月8日の試合を最後に欠場し、5月21日に復帰したものの、回復が思わしくないことを口にしていた。引退の理由について武藤は「膝同様に股関節も変形して、いずれは人工関節にしないといけない。人工股関節にした時点でもうプロレスはできない。遅かれ早かれという中で」と説明。「本当はプロレスやりたいよ。続けていきたい。ドクターストップというか、断腸の思い」と未練も吐露した。
今後の予定は決まっておらず、「ノアの会社と相談しながらおいおい発表していきたい」というが、契約が切れる来年2月に引退するものとみられる。対戦したい相手も明言しなかったが、自身の化身というグレート・ムタについては「(ムタがいる)魔界の門が開くな、もう1回2回は」と登場を示唆した。
類いまれな運動能力とプロレスセンスで頭角を現した武藤。グレート・ムタが米国で大人気となり、日本では蝶野正洋、橋本真也との闘魂三銃士でブレーク。大ブームとなったnWoでも活躍した。95年10月には東京ドームでUWFインターナショナルの高田延彦に勝利して多くのプロレスファンを感動させた。そして、全日本、ノアに移ってもトップを走り続け、多くのリスペクトを集める存在となった。だが、天才もケガには勝てなかった。
◆武藤敬司(むとう・けいじ)1962年12月23日、山梨県富士吉田市出身。柔道で全日本強化指定選手にも選ばれるなどし、84年10月に新日本プロレスでデビュー。88年からの米国遠征ではグレート・ムタとなって絶大な人気を博した。90年に帰国後は蝶野正洋、橋本真也と闘魂三銃士と呼ばれてトップスターとして活躍。02年には全日本プロレスへ移籍し、社長に就任。13年にはWRESTLE-1を設立したが、20年4月に活動休止となると、フリーとなってノアに参戦し、21年2月に2年契約で正式入団。同年11月にはGHCタッグ王座を獲得し、高山善廣に続く史上2人目のIWGPヘビー級と同タッグ、全日本の三冠ヘビー級と世界タッグ、ノアのGHCヘビー級と合わせてのメジャー3大シングル王座とタッグ王座の完全制覇を達成した。身長188センチ、体重110キロ。