強かったのは天心だ 実現まで7年-武尊との夢対決は壮絶殴り合い判定決着
「THE MATCH」(19日、東京ドーム)
“神童”那須川天心(23)が“K-1のカリスマ”武尊(30)を大差判定5-0でねじ伏せ、日本格闘技史上最大の一戦を制した。1回に左フックでダウンを奪うと、2回以降も多彩な攻め、巧みな防御で完勝した。7年をかけ実現したスーパースター同士の夢決戦に観衆5万6399人が熱狂。那須川は公式戦42戦全勝に伸ばし、無敗でキックボクシングを卒業し、プロボクシングに殴り込みをかける。
己のプライド、団体の名誉、ファンの期待を背負った者同士の決戦を制したのは天心だった。戦いを終えて武尊とともに号泣しながら抱擁した天心は顔をくしゃくしゃにしながら「やったぞー!」と絶叫した。
天心のスピードと武尊のパワーの激突が大方の見方だったが、戦いは一方的となった。地鳴りのような歓声が起こる中、初回から俊敏なフットワークで距離を保つ天心の右ジャブが次々ヒット。そして、終盤には武尊の左フックに「会心」という左フックを合わせてダウンを奪い、大観衆をどよめかせた。
2回、偶然のバッティングによる中断にも冷静だった。圧力を強める武尊と打ち合う場面が目立ったが打撃の多くを空振りさせ、ワンツー、左ボディーなどを突き刺して優位に試合を展開。最後の3回も逆転をかけた武尊の猛烈な連打を切り抜けて押し切った。
15年8月に当時16歳の天心がすでに武尊との対戦希望を公言してから始まった2人の因縁。団体の壁などさまざまな困難を乗り越え7年かけて実現した。国内最高額300万円シートは完売し、入場料収入20億円と言われる日本格闘技史上最大の一戦となった。
そして、「武尊選手がいたからここまで強くなれた」とライバルに感謝した天心。「今日勝って初めて自分で強いと思えました」と充実感をにじませた。キック界には相手が見当たらず、総合格闘技など競技の枠を越えた試合も重ね、「ずっとさみしかった。やっと出会えたというか、この人に勝てば強いと認められると。戦わないで引退するのはマジで心残りがあった」との思いを明かした。
今大会はRISE、K-1以外にも多くの団体が参戦。天心は「これからも協力していただけたらうれしいです」と、自身が去るキック界の各団体に呼びかけた。そして、この日は父の日。幼少期から父弘幸氏の英才教育を受けてきた天心は「いろいろあったけど、最高のプレゼント渡せたと思う。最高の親孝行ができたと思う」と弘幸氏に声をかけて抱きしめ合った。
会見では「負けたら死のうと思っていた。よかったです、生きられて」と決意していたことを明かした。最高の相手も突破して、全勝のままボクシングへ転向するが、今後については「ちょっと休んでから考えようと思います」と具体的には語らず。しばらく喜びの余韻に浸るつもりだ。
◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年8月18日、千葉県出身。5歳で極真空手を始める。14年にキックボクシングのRISEでプロデビュー。15年に史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得した。総合格闘技デビュー戦となった16年12月末のRIZINでは2戦して2連勝。18年大みそか、ボクシング元世界5階級王者のメイウェザーと3分3回の非公式戦で対戦し1回TKO負け。プロ公式戦42勝(28KO)。身長165センチ、左のボクサーファイター。愛称「神童」。