近大ボクシング部・名城監督 手取足取り指導する誠実な人柄「みんなで現状を打開したい」
アマチュアボクシングの強豪で、かつて全日本大学王座に10度就いた近大は、今年のリーグ戦を7年ぶりに2部で戦い、5大学中最下位に終わった。2019年4月に就任した元WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男監督(41)は、部の不祥事の影響でスポーツ推薦枠が消滅して低迷する名門で、競技未経験者を一から指導する日々だ。2部リーグ降格をあえて志願し、0から目指す名門復活への思いを聞いた。以下は取材後記。
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名城監督が「何かしら変わったやつが残っていく」と話すように、少人数ながら部員は個性豊か。ラグビー経験者の星航陽(2年)は、高卒で社会に出て、学費を稼いで大学に入学した。今年25歳。実験が多い農学部の奈良キャンパスから小一時間かけて本キャンパスの練習に通う。まだ勝ちを知らず「自分が強くなったという実感がほしい」と言う。
「伝統ある近大ボクシング部の一員として、みんながクラブを好きになって、みんなで現状を打開したい」と名城監督は言う。紆余曲折の中で探る名門復活の夢。それが、ただ強豪に戻ることだけではないのは、現役時代と変わらない誠実な人柄からわかる。
練習では時にハッパをかけ、時に冗談を飛ばして、ワンツー、フックから手取り足取り指導する。元世界王者の奮闘は、強豪か否かにかかわらず、部活動の原点にも見える。(デイリースポーツ・船曳陽子)