【長谷川穂積の拳心論】ジャブが絶妙のフランコに苦しんだ井岡一翔 中谷との日本人対決に期待
「ボクシング・WBA・WBO世界スーパーフライ級王座統一戦」(31日、大田区総合体育館)
WBO王者で世界4階級制覇の井岡一翔が、WBA王者ジョシュア・フランコとの2団体統一戦で判定0-1の引き分けに終わった。ミニマム級と合わせ日本初の2階級で王座統一はならず、WBO王座は6度目の防衛となった。フランコは2度目の防衛。井岡は相手の豊富な手数に劣勢を強いられ、カウンターで逆襲したが攻略には至らず。ジャッジは1人が115-113でフランコを支持、2者が114-114だった。
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手数とプレッシャーのフランコ選手か、手数は少ないが的確なパンチを打つ井岡選手か。今回の統一戦は、ジャッジがどちらに重きを置いてみるかで変わる難しい一戦だった。
1回からフランコ選手は固いガードを盾にグイグイと前に出て、ジャブを繰り出すことでプレッシャーをかけてきた。井岡選手もコンビネーションにボディー攻撃を交えて応戦した。これまでの彼の戦い方なら、自分からジャブを当てることで、前に出ても下がってもペースをつかむことができた。
しかし、今回はやや様子が違った。フランコ選手は単に手数が多いだけでなく、ジャブを出すタイミングが絶妙だった。0コンマ3秒くらいの差なのだが、フッと抜いたような時に、しかも前進しながら打ってきた。
井岡選手からすれば、それに手数が加わって、いつもの戦い方でできなかったように見えた。しっかりブロックで対応しているのだが、相手の手数に追いつかず、もらってしまった。そんな苦しい中で右のクロスカウンターを合わせるなど、彼ならではのコンビネーションを見せたのは、経験のたまものだ。
指名試合が義務づけられている中谷潤人選手は、過去最強の挑戦者になるだろう。今回、負けなかったことでビッグマッチにつながった。日本人対決でどんな試合を見せるのかが楽しみだ。(元世界3階級制覇王者)