キックの“神童”那須川天心 キレキレでプロボクサーB級テスト合格「極められるように」
キックボクシングで42戦42勝を誇った“神童”こと那須川天心(24)=帝拳=が9日、東京・後楽園ホールで、これまでの実績が認められて6回戦に出場可能なB級でプロテストを受験し、一発合格した。3回のスパーリングでは日本バンタム級1位・南出仁(27)=セレス=と互角以上の戦いを見せ、筆記試験では100点満点中、97点の高得点をマーク。格闘技無敗の神童のデビュー戦は、バンタム級かスーパーバンタム級で4月上旬となる見込みだ。
キックボクシング界の神童は、やはり通常の選手と器量が違う。報道陣100人の視線が注がれる中、キレキレの動きで周囲をうならせた。
日本バンタム級1位の南出に左ジャブを的確にヒットさせた。軽快なフットワークで、相手の強いパンチをほぼ受けることなく3回をこなした。終了後もリングでスピード感あふれるシャドーをこなして、体力面もアピール。全行程終了後、合格が発表されるや「何かに合格するのはうれしい。受験は高校以来なので、すごく新鮮」と喜んだ。
それでも緊張を感じながらの受験だった。マウスピースを忘れ、慌てて近隣のフィットネスショップへ行き、購入。「新人らしくていいんじゃないですか?」と笑い、通常の実力を出し切り、大舞台慣れした強さも見せた。
実技以外でボクシング脳の高さも見せた。筆記試験では、100点満点中97点と70点の合格ラインを悠々クリア。間違えたのはトランクスのルールに関する問題で「スカート状着用も問題はない」の問いに対して○をつけたものの、正解は×だった。「キックはオッケーなんでね。まあ、そこの違いは知られたのでいい発見」と笑った。
視察した帝拳ジムの本田明彦会長は「戦うための全てが備わっている。1年以内に日本タイトルに挑戦させたい」と言い、4月がデビュー戦となる見込みだ。ボクシング転向を第2章と位置づける天心は「どの競技でもしっかり対応して、極められるようにする」と決意。ボクシングも極めてみせる。
◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年8月18日、千葉県松戸市出身。5歳で極真空手を始めた。14年にキックボクシングのRISEでプロデビュー。15年に史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得した。総合格闘技デビュー戦となった16年12月末のRIZINでは2戦して2連勝。18年大みそかに、ボクシング元世界5階級王者のメイウェザー(米国)と3分3回の非公式戦で対戦し1回TKO負け。公式戦は通算47戦47勝(32KO)。身長165センチ、左のボクサーファイター。愛称「神童」。
◆プロテスト 受験資格は満17歳から申し込み時に34歳までの男女。通常2ラウンドの実技試験とルールに関する筆記試験がある。ボクサーライセンスにはA級(8回戦以上)、B級(6回戦)、C級(4回戦)とあり、通常はC級スタート。特例として他の格闘技で多大な実績があり、アマチュアボクシングの日本ランキングで10位以内の実力があると判断されればB級での受験が可能となっている。
◆主な注目選手のプロテスト
▽井上尚弥(2012年7月10日・後楽園ホール) 高校7冠の実績を引っ提げB級(6回戦)で受験し、3回のスパーリングでは日本ライトフライ級王者・高田雅之(川崎新田)をスピード感あふれる動きで圧倒するなどして合格した。
▽村田諒太(2013年4月16日・後楽園ホール) ロンドン五輪ミドル級金メダリストの実績で史上初のA級(8回戦以上)を受験。前日本ミドル級王者・佐々木左之介(ワタナベ)にアッパー、フックを決めるなどして合格した。
▽辰吉寿以輝(2014年11月24日・大阪IMPホール) C級(4回戦)で受験。小山英哉(ワイルドビート)を相手に1回に左フックを顔面にたたき込みダウンを奪った。父・丈一郎譲りの破壊力を見せ一発合格。
▽武居由樹(2021年1月8日・所属する大橋ジム) B級(6回戦)を受験。元K-1ワールドGPスーパーバンタム級王者の片りんを見せて合格した。