元陸上日本代表の木村淳はデビュー戦飾れず、ダウンの応酬で壮絶KO負け「ひとつの財産に」 ボクシング西日本新人王戦
「ボクシング・西日本新人王戦」(17日、堺市産業振興センター)
準決勝が行われ、スーパーフェザー級では、元陸上短距離の日本代表からボクサーに転じた木村淳(32)=大阪帝拳=がデビュー戦に挑み、小松直人(19)=森岡=に4回2分35秒TKO負け。元U-15全国王者で昨年の西日本新人王でも決勝に進むなど実績で上回る小松と、ダウンの応酬を繰り広げた末の惜敗だった。
残り30秒を切っていた。コーナー付近で相手の強烈なカウンターを食らった木村は、キャンバスに崩れ落ちて失神。タンカで運び出された。意識を取り戻すと「この1戦に向けて取り組んできた。それがひとつの財産になった」と、敗戦にも充実感をにじませた。その後は念のため、救急車で搬送された。
それほどの激闘だった。前半はサウスポーの小松の連打でダウン寸前まで追い込まれた。しかし、そこで屈することはなかった。陸上で鍛えたスタミナと身体能力で、3回には左でダウンを先取。4回もダメージの残る相手を攻め立てたが、最後に一瞬の隙をつかれた。
19歳のホープと戦ったデビュー戦。陸上で日本の頂点を戦ってきた32歳は「バックボーンは違うけど、それに関係なく(それぞれが)このリングに立てたことはよかった」と言う。
陸上の強豪、大阪ガスに所属し、2018年ジャカルタ・アジア大会の男子1600メートルリレー、男女混合リレーに日本代表として出場。16年リオデジャネイロ五輪400メートルリレー銀メダルの飯塚翔太らがライバルだったが、東京五輪の1年延期が決まった20年に引退した。
その直後に、子どもの頃から憧れていたボクサーの道を目指して大阪帝拳に入門。昨年11月にプロテストに合格し、大阪ガスネットワークの営業マンとボクサーの二足のわらじを履いてきた。
持ち前の身体能力から生まれる強打、タフな精神力も見せた試合に、大阪帝拳の吉井寛会長は「いい試合だった。練習していた左でダウンを奪い、よく頑張った」とねぎらった。紙一重で得られなかった初勝利。ボクシングの怖さも思い知ったトップスプリンターは、この先もリングで夢を追うという。