父・真吾トレーナーが語るモンスター井上尚弥の原点 幼少期にかわした「男と男の約束」とは

 「ボクシング・WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(25日、有明アリーナ)

 日本男子2人目の世界4階級制覇を達成した井上尚弥(30)=大橋=の父・真吾トレーナー(51)がデイリースポーツの取材に応じ、息子の快挙達成をたたえた。小学1年生でボクシングを始め、プロ転向後も連勝を伸ばし続けるモンスターに「先のことを考えるよりも、一戦一戦を大事にという心構えでやってきた。一つ一つクリアしていったら、結果がついてきた。それが今につながっている」としみじみと振り返った。

 練習から妥協を許さない姿勢は、ボクシングを始めた時から根付いている。ボクシング経験のある父に憧れを抱いていた尚弥は、幼少期に自らやりたいと申し出た。

 「厳しさのある格闘技なので、簡単にいいよと言えなかったのですけど、本人がやると決めたことなので、『男と男の約束だ』としっかりかわしました。やると決めたら、自分に言い訳できないよと」

 破格のファイトマネーを手にしても、浪費することはしない。自身もたたき上げで、事業での成功を収めた真吾氏。プロ転向前には社会人として常識的な金銭感覚を身につけさせるためにアルバイトをさせたこともある。

 「やっぱり体を使って、汗を流して、給料をもらうということは大変なことだと分かってもらいたかった。スポーツ選手って自分のたけているところでやるから、そういう(金銭)感覚がないと思う。一般の人はみんなこうやって、生計を立てているんだよ、というのを少しでも経験して感じてほしかった」。そんな父の思いが通じて、尚弥はリングに立てば「見てくれているお客さんを意識している」と言う。入場料を払って応援してくれるファンへのありがたみを決して忘れない。

 4月にWBA世界バンタム級王者となった弟・拓真に続き、兄弟でベルトを獲得。「(尚弥は)長男っぽい。人を引っ張っていくタイプですよね。まあ、拓真は次男といえば次男らしい。性格は兄弟で全然違うんですよね。自分は次男なんだけど、ナオと同じような性格。自分に似たのかな」と真吾トレーナー。はにかみながら答え、長男の背中を見つめた。

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