【長谷川穂積の拳心論】覚悟を決めて前に出てきた相手を仕留めた井上尚弥のすごさ

 「ボクシング・世界スーパーバンタム級4団体王座統一戦」(26日、有明アリーナ)

 井上尚弥(30)=大橋=がマーロン・タパレス(31)=フィリピン=を10回KOで倒し、史上2人目となる2階級での4団体王座統一を成し遂げた。新たな伝説が生まれた一戦を3階級制覇の元世界王者・長谷川穂積氏が解説した。

  ◇  ◇

 戦前には尚弥選手が4、5回でKO勝ちすると予想していたので、思った以上に苦戦した内容だった。相性や戦い方もあるけど、やっぱりボクシングはやってみないと分からない。タパレスは序盤はかなり警戒心を強めてガードを固めてきた。しかし、試合が進むにつれ、重心を後ろにかけて空間をうまくつくり、パンチをかわしていた。目がいいし、ディフェンスにうまさを感じた。

 ただ、この戦い方ではポイントにはつながらない。それでも、4回にダウンを取られてから、“このままではダメだ”とタパレスは覚悟を決めて前に出てきた。いい右ブローも当てていたし、普段はパンチをもらわない尚弥選手がのけぞる場面もあった。半身で構えるタパレスにやりくくさも感じていただろうし、これまでのバンタム級だったら、あれだけ当てれば倒れていたはず。2戦目にして、スーパーバンタム級という階級の壁を感じたと思う。

 ただ、中盤を過ぎて、これは判定までいくかなと誰もが思ったところで10回にKOで仕留めてみせた。覚悟を決めた相手を倒し切るのは本当に難しいこと。ただ、(判定で)勝つだけなら余裕で勝てるけど、どうしても尚弥選手はKO勝ちを期待されている。その周りの期待に応えるのはやっぱりすごい。改めて強さを感じることができた。

 4団体を統一して、来年もスーパーバンタム級で戦い続ける。個人的には、アフマダリエフとの対戦を見てみたい。タパレスには僅差の判定負けを喫したが、それまでは無敗だった強豪。尚弥選手との試合が実現すれば、かなり面白くなるはずだ。

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