キラー・カーンさん悼む あの熱唱が今も頭の片隅に あの尾崎豊が愛したカレーライスをもう一度、食べたかったなぁ
キラー・カーンのリングネームで一世を風靡(ふうび)した元プロレスラーの小沢正志(おざわ・まさし)さんが29日午後、動脈破裂で死去していたことが30日、分かった。76歳だった。小沢さんは東京・西新宿で経営する居酒屋「カンちゃんの人情酒場」で営業中に倒れたという。
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あのときの熱唱が今も頭の片隅に残っていますよ。カンさん。今は雲の上でマイクを握っていますか。
プロレスファンはモンゴリアンチョップや大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントを骨折させた荒々しいファイトを思い出すかもしれません。でも、私にはマイクを握った姿が最初に浮かびます。
もう、何年前になるのでしょうか。確か2005年だったかなぁ。思いがけない電話がかかってきました。その主がカンさんでしたね。「実は曲を出したんですよ。PRしてくれると助かるんだけど…」と、あの大きな体とは裏腹な蚊の鳴くような声。しかも申し訳なさが伝わってくる内容でした。「いいですよ」。そう返事をするとこう言ったと思います。「あしたの午後に会社に行きます。よろしく」
半信半疑でしたよ。顔見知りとはいえプロレス界のレジェンドですから。ところが本当にやってきました。たった一人で、曲を内蔵した豆カラを1本だけ持って。曲は『ふるさと真っ赤っか』でしたっけ?あの大きな体を揺らしながら身ぶり手ぶりで、しかも鼻の頭に汗をかきながら歌う姿は、真剣そのものでしたね。
体調を崩し新大久保にある「居酒屋カンちゃん」を閉めたときには心配していました。でも、最近、西新宿で「カンちゃんの人情酒場」をオープンさせたと人づてに聞き、安心していたのに…。あの尾崎豊が愛したカレーライスをもう一度、食べたかったなぁ。逝くのが早すぎますよ。(デイリースポーツ・コンテンツ局顧問・今野良彦)